二話 呪縛2-1
時の名前は分からない。忘れてしまえば意味はない。
しかし、人が生きていくためなのか、本能的なのか、忘れないものもある。
平成が終わった現在でも続いているものならば、尚更だった。
いつの時代も変わらないもの――それは、いじめだ。
群れの中で周りと同じだと主張するため、自分自身を優位に立たせるために、決してこれは変わらないことなのだろう。
そして、それは誰かの犠牲から成り立つことも、人は成長すれば何となく分かってくる。
それが小学三年生くらいになれば、悪いことだと分かっていても、自身を守るためにやめてはならないものだと気付くのだ。
自分の周りもそうだった。
自分は、その保身をする者達が生きていくための成長の糧になった。
つまりは、いじめの的だ。
そうなった理由を、自分は知っていた。
自分には、他人とは違う力があった。
その力は、人に見えない者を見るだけでなく、集中すれば手を使わずとも物を動かすことができた。そうは言っても、僅かなズレのようなものだった。
教室の隅に見知らぬ子どもが立っていると自分が言えば、そこは一日誰も近付かず、校庭の鉄棒に女の顔が乗っていると言えば、誰も遊ばない。
自分が何か言えば、皆が一斉に動く。
まるで先導者にでもなった気分で、自分はそれが嬉しくもあった。
「どうして見えるの?」
「すごいね!」
はじめは、自分の力を珍しがる同級生に囲まれていた。
どうして見えるのかと質問をされることが多かったが、それに答えられることはできなかった。
なぜなら、自分にもそれは分からなかったからだ。物心がついた時には、すでに彼らは自分に見えていて、何かを訴えかけてきた。皆もそうなのかと思っていたが、誰もが見えないと答え、自分の力が特別なのだと気付いた。
集中したら、物を動かせる力も、なぜそうできるのかは知らない。
「ねぇ、消しゴム動かしてみて!」
「わっ、本当に動いた!」
「すごぉい!」
少しでも消しゴムやら鉛筆やらを動かせば、皆から羨望の眼差し。それが心地良くなかったと言えば嘘になる。
だが、いつからか、珍しがり、歓声を上げ、羨望の眼差しをしていた周囲の人々が、自分をだんだんと気味悪がり出した。
何が大きなキッカケだったのかは、さすがに思い出せない。じわじわと周りの目が変わっていったような気もする。
「物を動かせるなんて、ちょっと気持ち悪い……」
そう誰かが、言ったような気もする。
「後ろに誰かがいるって言われてから、変なことが起こる……もうあなたとは話さない」
それも誰かが言った気がする。




