二話 呪縛1-3
花子は、いつも生きている人間達の最新情報を欲していた。流行りの物も彼女の方が知っている。人気のあるアプリだ、この俳優が今よくドラマに映画に出演している、と彼女が教えてくれる。誰かとシェアしたいと思っていても、残念ながら華子にはそんな友人がいない。
こう言っては語弊があるかもしれないが、花子が生き生きしているのは、常に情報を求めているからだろう。
『ちょっと、ハナ。自分のことでしょ? 話しなさいよ』
「は、話せって言われても……」
肘で小突くふりをする花子に、華子は戸惑った。
自分のことなのに上手く話せない。
実際、彼氏ができたわけではない。
ただ――
「ちょっと、話しただけ、だもん」
『誰と?』
知っているくせに、訊いてくる。
『てかさ、どっちにすんのよ?』
「いや、誰と誰を言ってんのよ?」
華子が最近話した人で、心当たりは一人だけだ。
華子は、先月から憧れていたクラスメイトの吾妻霖之助と少しだけ話せるような仲になった。霖之助の部活がない時、通学路で会えば「おはよう」と「またね」「またな」と挨拶を交わす程度だが、華子にとっては大きな進歩だった。
だが、花子は別の人のことも言っているようだ。
『年下もいいと思うけどねぇ、あたしは』
そこでようやくピンとくる。
「もしかして、直也くんのこと言ってんの?」
『寧ろ、他に誰がいんのよ?』
「小学三年生だよ⁉」
華子は呆れながら、素っ頓狂な声を上げた。
でも、花子は肩を竦めて笑う。
『恋に年齢は関係ないない』
「見た目的には、花子と良い感じじゃない」
『はあ? あたしとあの子じゃ、何十歳離れてると思ってんのよ? 却下』
「さっきと言ってること違うよね⁉」
華子の盛大なツッコミに、花子は憎たらしい顔で答える。
『まっ、あの子がこっちに来たら、考えてあげるわ』
「うわぁ、相変わらずの上から目線」
久しぶりにこんなことを話している気がした。
花子も前よりは顔色が良い気がした。血が通っていない彼女に、顔色の云々を言うのは変なのだが、感覚的なものだ。
しかし、花子の力は底を知れない。
今もここにある呪われた彫刻も、確かに負の力が凄まじいものだろう。生きているときに抱いた憎しみや悲しみ、寂しさが凝縮され、生きている者へも悪影響を及ぼすほどだ。
それらを凌駕するほどの力を、花子は持っている。
それを華子は知っている気がしているが、きっと理解はしていないのだろうとも思っていた。
(花子が本気を出したら、わたし達はどうなっちゃうんだろう?)
時々考えていることだった。
花子の力の源が一体なんのかを、華子は知らない。
怒りなのか、憎しみか。悲しみなのかもしれない。
生きている者達へ花子が牙を剥いた時を想像しても仕方のないことだと思っている。
しかし、他愛のない会話と笑いは、それを押し流してくれるが、消してはくれなかった。




