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一話 呪われた彫刻9

 痛い!


 自分の体に感じたそれが、久しぶりのようにも思えた。

 もう感覚が分からなくなっていたのだ。

 誰の感情なのか、誰の痛みなのか。苦しみも、悲しみも、叫びも、自分のものではない。

 振り回されて、直也の幼い心と体は、疲弊し切っていた。


 ぼく……このまま死ぬのかな?


 怪談が好きで、ついに自分が呪いで死んでしまうのだろうか。

 よく遊び半分でそういったことに首を突っ込むと、呪われると聞いたことがある。

 きっと罰が当たってしまったのだ。

 でも、決して遊び半分だったわけではない。

 本当に幽霊やお化けがいると信じていたし、本気で見たと思っていた。

 それが、こんなにも苦しいことだったとは、知らなかった。


 死にたくないよ……


 さっきまでは空から自分の体を眺めているような感じだったが、今は周りが真っ暗で、自分がどこにいるのか分からない。


 帰りたい……お母さん……お父さん……


 これは、自分の感情なのだろうか。

 自分の中にいる誰かも、同じことを思っているのだろうか。

 徐々に、意識が薄れていく感覚がしていた。


 誰か……


 誰でもいいから、名前を呼びたかった。


 誰か……お姉ちゃん……


 ふと、昨日会った少女の名前を思った。


 お姉ちゃん……はなこお姉ちゃん!


 思い切り呼ぶ。

 声が出ているのか分からない。

 体が重い。誰かが熨しかかられたようだった。


 はなこお姉ちゃん! 助けて……!


 不意に、周りが温かくなった。

 見ると、青い炎が自分を包んでいる。



『君が呼んだのは、あたしじゃないと思うけど』



 目の前に、真っ赤なワンピースを着た女の子が、ふわりと現れた。

 自分と同じくらいの女の子だ。


『一応、あたしも花子って言うの。よろしくね』


 直也は知っている。

 だって、彼女は有名だから。


「トイレの……花子さん⁉」

『正解。さすが怪談好きね』


 ふっと笑った顔は、直也が思っていたよりも大人だった。


『さて、と。君とこいつらを引き剥がさなくっちゃ。危うく、君の魂まで体から引っぺがしっちゃうとこだったから』


 結構あっさりと怖いこと言う人だと思った。

 が、直也は、それ以上に目の前の女の子に興味津々だった。


「花子さんだ! 本当にいたんだ!」

『あら? あたしはいつだって、ここにいたわよ?』


 まるで有名人に会ったかのようだ。

 さっきまでの熨しかかられたような体の重みが、なくなっていく。

 辺りも、霧が晴れていくように色を取り戻していく。自分の好きな青い色が、広がっていく。

 それが、花子から放たれている炎のような気なのだと直也は気付いた。


「花子さんは、赤いワンピースを着てるけど、青いんだね」

『あたしは何色にもなれるの。いえ、誰にも決められた色なんてないよ。好きな時に、好きな色を見せればいい』


 そう言って、花子はパチンと指を鳴らした。

 と、今度は黄色のゆらゆらした気が辺りに広がり、またパチンと彼女が指を鳴らせば、それは薄い紫になった。

 花子の言った通り、彼女の放つ気は、彼女の思うままのようだった。


『さっ、タダで見せてあげるのはここまで。君は君にお帰り』

「帰る? でもどうやって?」


 帰り道が分からない。

 直也は一瞬で不安になった。

 でも、花子はまた微笑んだ。


『君の思う方向が、君の帰り道』


 直也は少し考えて、顔を上げた。

 そして、その方向へ一歩踏み出す。また一歩、次の一歩と。

 が、途中で振り返った。


『どうかした?』


 花子が首を傾げた。


「ありがとう、花子さん」


 言って、直也は駆け出した。


 自分へ帰る道を、真っ直ぐに――

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― 新着の感想 ―
[良い点] 花子さん、やっぱり格好良いですね。 女の子なのに「男前!」と声援を送りそうになってしまいました^^; >『君の思う方向が、君の帰り道』 このセリフが素敵です。
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