五話 受け継いだ者13-2
(すご! わたしの体すごい!)
『あたしの運動能力なんだけど、ねっ!』
華子の自画自賛に、花子は突っ込みながらテケテケの腕から跳躍する。
右腕の切っ先が、華子のスカートの裾を切り裂いた。
(ちょっ! パンツ見えちゃう!)
『それどころじゃないでしょ! てかハナ、ちょっと静かに……!』
テケテケの左腕が鞭のように横から薙ぎ払ってくる。
『面倒な両腕ね』
ひらりと体を回転させ、花子はそれを避けた。
しかし、中の華子はそれどころではない。
(ひえぇ! 目が回るぅ!)
体の動きについて行けない。
『ちょこまかとぉ……!』
遂には槍のように鋭くなったテケテケの右腕が、背後に迫ってきた。
それを間一髪で避け、花子は右の掌に貯めていた気をテケテケの腕に叩き込んだ。
『ぎぃひぎゃ!』
右腕が吹っ飛び、テケテケの体が傾いた。
素早く伸ばした腕を収縮させるテケテケに、次いで花子は左手の気を力一杯放った。
それをテケテケも左腕で弾こうとしたが、メキメキと音を立て、腕を天へと吹き飛ばした。
『ぎゃあぁ……!』
反動でテケテケの体は地に落ちる。
辺りには砂埃が霧のように舞っている。前がしばらく見えなかった。
しかし、華子の視界が明瞭でない理由はそれだけでなく、今までしたことのない激しい動きと、力を急激に吸い上げられている感覚のせいだった。
(め……目が回って……ぎもぢわるい……)
息が上がっている。
それが、自分のものなのか、花子のものなのか段々分からなくなっていく。
『ひひ……ひひひぃ……』
耳の奥にこびり付くような嗤い声に、はなこ達はその方向へと目を向ける。
華子の視界は、相変わらず霞がかっていた。
が、その声は嫌でも鼓膜を震わせる。
『これで、次のトイレの花子さんが誕生ってことだねぇ』
華子の鼓動が跳ねる。いや、それは花子のものだったのか。
『あんたがその体から出なければ、その子は……くくくっ……あんたの力と呪を受け継ぐ者となる。アタシが、それを探していたように』
花子が一歩一歩、前に進んだ。
華子は、留まりたかった。しかし、今体を動かしているのは、彼女だ。
(や、やっぱり……花子は……)
花子は、テケテケの前で立ち止まった。そこは、さっきまで自分が倒れていた、校庭の真ん中だった。
『此処から出ていけ、テケテケ』
『いらないんなら、アタシに頂戴よ、ひひぃ。アタシは、もう……疲れた』
『じゃあ、あっちへ逝きな。手伝ってやる』
華子の両の掌が、先よりも熱くなる。
(花子、まさか止めを刺しちゃう気じゃ……)
『あっちへ逝く手伝いをするだけ。ハナの力を、消滅させることには使いたくないもの』
花子は両手を合わせた後、そっとテケテケの胸に左右の掌を置いた。




