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五話 受け継いだ者13-1

 触れられないはずの手。

 しかし、ひんやりとした感覚がした。

 華子はしっかりと握った。

 砂煙が舞い、目を瞑ってしまう。


(離さない……!)


 本当に親友の手を握っているのだろうか。

 疑いそうになる想いを振り払い、華子は口を開いた。



 花子! 起きてよ!



 それは、声にならなかった。



 起きろぉ! 唯我独尊超絶我儘、最強妖怪でしょ! トイレの花子ぉ!



 が、確かにそれは花子へと届いていた。



『黒髪万能美少女が抜けてるわよ』



 口が動いている感覚はある。しかし、それは華子の声ではない。


(は、花子?)


 口と頬が笑みを作ったようだ。


『なによ? ハナが使っていいって言ったんじゃない』


 掌を見る。目も手も華子のものだ。


『自分の足で歩くのなんて久しぶり』


 でも、体を動かしているのは華子ではない。

 嬉々としている声を、華子は不思議な気持ちで聞いていた。


『ハナ、ありがとう』


 花子の言葉に、華子は自分の体に彼女が憑いたのだと実感した。

 目の前に、苦虫を噛み潰したような顔をしたテケテケがいた。

 その足元に、ピアノが息も絶え絶えに蹲っている。

 はなこ達にテケテケが近付かないように、必死で気を放っていたのだろう。


『ピアノまで無理しちゃって……』

『あと……任せます』


 仄かに笑ったピアノが、ふっと姿を消す。


(あっ……ピアノちゃん……!)

『大丈夫。自分の居場所に戻っただけ』


 華子の心配を、花子が答えた。


『ハナの力が、此処をまた創ってくれる』

(え?)


 花子に言われ、地面の揺れが収まっていることに気付いた。


『それに、あたしも体も』


 体の内側が熱くなる。血が流れていることを全身で感じているようだった。

 あの不気味な嗤い声が聞こえた。


『生きている人間の体に入るなんて、アタシに真っ二つにしてくれって言ってるようなもんだよぉ』

『さあて? どうかしらね?』


 華子の足が、地を蹴った。


(えっ……ええぇ⁉)


 瞬間、自身の視線の下にテケテケが見え、華子は内心で絶叫していた。


(こっこんな飛べるのぉ⁉ わたしの体⁉)


 テケテケの濁った目と合い、一瞬恐怖が蘇った。


『串刺しの方がお好みかぁい⁉』


 華子の恐怖を、花子の勝気が上回る。


『この身体は借り物だからさ!』


 伸びてきた腕をタンッタンッと花子は小気味良いステップで伝う。


『怪我させらんないのよ!』


 まるでVRのジェットコースターに乗っている気分だった。

 が、これはリアルだ。

 はなこ達を捕まえようと、テケテケの腕はぐるぐると蛇のように蜷局を巻きながら追ってくる。花子はそれを華麗に避けていく。

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