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五話 受け継いだ者12-1

 校庭の中央は歪み、蟻地獄のようになっていた。

 此処の主である赤いワンピースの少女の体は、すでに半分地中に埋もれている。

 青白い頬が透けている。

 テケテケはそれをじぃっと見詰めていた。

 己と同じように、この世と呼ばれる場所に繋がれた存在。

 しかし、己と全く違う意志を持つ者だ。


『あんたは、なぜ……?』


 不意にぞくりとする気配が小学校の中から出てきた。

 テケテケは、古びた扉のようにゆっくりと首をそちらへと向ける。


「花子!」


 病院から此処まで来た少女だった。

 揺れる地面に覚束ない足取りだが、確実にこちらへと近付いてくる。

 この少女は、一体何者なのだろう。

 力はあるようだが、実際に何かができるわけではないようだ。


 それでも、此処の主は、あの少女をとても大切に想っている――


『あの子が、次の……』


 それに、少女は気付いているのだろうか。

 テケテケは、にたりと嗤う。


『アタシが伝えてあげるわぁ』


 無防備にこちらへと向かってくる少女を、テケテケは見据えるのだった。




 華子は、大切な友人の前に立ち塞がる恐ろしい侵入者へ向き合った。

 見れば見るほど、恐怖に体が竦んでしまう。


「あ、あなたなんて、恐くないんだから」


 嘘は震えていた。

 生温い風が、頬を撫ぜていく。

 此処が、崩壊していく音がする。

 何も答えず、ただただこちらを見て不気味に嗤う侵入者に、華子は精一杯の言葉を放つ。


「花子が、あなたに負けるはずない……!」

『なぜ、そんなに信じる?』

「え……?」


 まさか、問われるとは思っていなかった華子は、少し間抜けな声を出してしまった。

 ふっと目の前から侵入者が消える。


「へっ……え? ど、どこ……ッ⁉」


 背後に気配がして、思わず振り返った。


『ほぉ? 反応は良いねぇ』


 目の前にあの不気味な嗤いがあった。

 蛇に睨まれた蛙とは、まさに今の自分のことだと華子はどこか冷静だった。心が恐怖から逃れようとして、客観的な自分を作り出している。


『アタシはねぇ、別に此処のお化け達と争うつもりなんてないんだ。ただ、アシが欲しいだけ』

「だ、だからって……人の足を奪っていいわけないじゃない……!」


 目の前の侵入者は、瑠奈を狙う前から、多くの人間の足と命を奪ってきたのだろう。

 病院で見た時以上に、放つ気が強力に、そして刺すようなそれへと変わっていた。

 花子のものも微かに感じる。

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