一話 呪われた彫刻5-2
ぼおっと歩いていると、前を行く小学六年生くらいの女の子達の話が耳に入ってきた。
「ねぇ、聞いた? 昨日、三年の子が、図工室で倒れてたらしいよ」
「えぇ? また? あの彫刻?」
「本当に、あれ、呪われてんのかな?」
「呪われてるでしょぉ、どう考えても。だって、あれが来てからじゃん、倒れる子が多くなったの」
「やだなぁ。今日図工あんじゃん」
「てか、しばらく図工室でやんないでしょ」
華子は、立ち止まった。
そういえば――今日は、直也を見かけていない。
華子は通学中に周りを見る方ではないが、直也だったらまた話しかけてきそうだ。
慌てて周囲を見た。傘が邪魔で、顔が見えない。
顔――
ふと浮かんだ、直也の顔。
(まさか、倒れたのって……!)
華子の内心がざわついた。
「ねぇ! その男の子、大丈夫だったの⁉」
思わず、前を歩く小学生達に声をかけていた。華子の勢いに、彼女達は少し引き気味だった。
「えっ……さ、さあ? 違う学年だし……」
「保健室に運ばれたって、他の子から聞いたけど」
互いの顔を見合わせながらおずおずと答える女の子達に、ハッと我に返った。
「あっ、そ、そうなんだ。ありがとう」
慌てて彼女達を追い越し、傘の柄を握り締める。バタバタと雨が傘を叩く音の合間に、背後の女の子達の会話が聞こえた。
「誰?」
「さあ?」
「倒れた子の知り合い?」
会話がどんどん遠ざかる。
そして、徐々に不安が膨らんだ。
倒れたのは――直也かもしれない。
どうしよう。花子は知っているのだろうか。
今夜は、何があっても、夜の小学校へ行かなければいけない。
黒い雲が、ゴロゴロと音を立てていた。




