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五話 受け継いだ者10-2

『ッ……⁉』

『だからねぇ、あんたにはとっとと消滅してもらわないと』

『くッ』


 膝を折り、勢い良く腰を後ろに倒した花子の鼻先を、テケテケの鋭い爪が通り過ぎて行った。


『ほぉ、柔らかいんだねぇ……ぃッ⁉』


 後ろに倒れる勢いを殺さず、花子はそのまま地面に手をつき、バク転をし、通り過ぎそうになるテケテケの首元に足を絡ませる。そのまま今度は上体を起こす勢いで、彼女を地面に叩き付けようとした。

 しかし、下半身がないテケテケは地面に体を打ち付ける直前に、するりと花子の足から逃れた。


『チッ』

『ひひひぃ』


 花子の舌打ちに、テケテケの不気味な嗤いが重なる。

 テケテケの動きは素早く、花子の間合いから即離れた。


『ずっと学校に引き籠りの化石かと思いきや、意外とやんのねぇ』

『あたしだって、静かに引き籠って、子どもらをちょっと驚かすくらいの存在でいたいわよ。でも、あなたのように、厄介な存在がひっきりなしに現れるから、それもできなくってね』


 テケテケが再び不気味に嗤う。

 生きている者達から生気を奪う声だと花子は思った。

 睨み返せば、真っ赤な口が三日月のように開く。


『まるで、自分は此処の守護者みたいな顔してるけど、あんただって、生きている者からすれば、厄介な存在じゃない。特に、あんたのオトモダチにとってはさぁ』

『あなた……』

『次の獲物は、ひひひぃ……あんたのオトモダチィ……』


 花子はダンッと地を蹴った。先ほどよりも速くテケテケの間合いに入る。


『とっとと出ていけ』


 普段は黒い花子の瞳が、燃えるように赤く染まった。

 体からは炎のような気が立ち上る。

 花子が腕を振れば、それは燃える大蛇のようにテケテケへと突進した。


『守りたいのねぇ』


 テケテケは薄気味悪い笑みを絶やさず、花子の放った気を軽々と避けた。


(こいつ、動きが……!)


『馬鹿な神がアタシに神気を分けてくれたのよぉ。おかげで、この町に来た時よりも力が漲っちゃって』

『⁉』

『だからねぇ、こぉんなことも』


 自分を追ってうねる花子の強大な気を、テケテケは真正面から受け止め、そして――


『なっ……⁉』

『できるようになっちゃったんだよぉ……!』


 切り裂いた。

 テケテケの右腕は、まるで門の神のように伸縮自在となり、爪は先ほどよりも鋭利に尖っている。


『さっき、あんたのことも少し削ってやったからねぇ』

『……人の力を吸い取ることもできるってわけ。ほんと悪質ッ』


 言った瞬間、目の前の侵入者の姿が消えた。

 花子の前後左右で微かに砂が跳ねる。それは近付いては離れ、集中力を削いでいく。

 気配を感じた場所に、花子は自らの赤い気を撃つ。が、そこに砂埃が立つばかりだった。

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