五話 受け継いだ者7
此処はどこ?
あたし、死んじゃったの?
誰もいない。
お父さん、お母さん、お姉ちゃん……!
叫んだつもりだが、声が出ていない。誰も答えてくれない。
此処は、普段通る通学路だ。
あのスーパーだって、さっき嫌いなあいつが出てきた。
でも、今は誰もいない。
此処は、あたしの住んでいる町じゃないの?
息を潜め、身を潜めて、何処へ向かうでもなく、只管に逃げていた。
あれは一体なんだったの?
見慣れたはずの町並み。しかし、今は初めて見る風景のように感じる。
家族や友人だけでなく、見知らぬ人々がそこにいるから、町を自分の知っている場所だと感じるのかもしれない。
時折、風で揺れる何かの影がある。
それに怯えた。
あの音が聞こえるかも……
怖くて堪らない。
でも、逃げなければならない。
しかし、どこへ――
普段通る道を外れた。
逃げる。走り、隠れ、怯えながら走る。
辺りは、すっかり暗くなり、陰は濃くなっていく。
街灯がゆらゆらと揺れている。
視線を上げると、大きな壁のような建物が見えた。
あれは……小学校?
不意に、あれが聞こえた。
テケテケ……テケテケ……
探している。
自分を探している。
自分の足を探している。
自分になる自分を探している――
逃げなければ。
あそこまで、逃げなければ。
小学校まで逃げれば……
音が通り過ぎるのを待ち、小学校へ向けて、また走り出した。




