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ぐるりとコロナ王国の首都であるコロナを囲むのは、石と防御魔法でできた強固な壁だ。近くで見ると迫力が凄い。
そんな壁を東の門から出て、俺とメルはゴブリンの出た村へと向かった。
「確か、村に出たゴブリンを倒せばいいんだよな?」
俺は村まで続く道を歩きながら言った。馬車などがよく通るのか、草がハゲていて道に迷うことは無い。
「そうよ。魔石はお金になるから回収し忘れないようにね」
「わかった」
目の前を歩くメルの装備は、剣に皮の胸当て。一般的なHランクの冒険者にしては物足りない。
どうやらメルは、今までどこのパーティーにも入れてもらえず、一人で薬草の採取とかをしていたらしい。なんか可哀想だ。これからは俺がずっと一緒にいてあげよう。
そんなメルと、俺の装備はあまり変わらない。武器が刀というだけだ。防具は『武器召喚』の次にゲットした『防具召喚』で出したものだ。
『武器召喚』や『防具召喚』を使って、武器や防具を量産しそれを売って稼ごうと考えてみたが、魔力かなんかの関係で無理だった。
「そろそろ見えてくるわよ」
メルの声によって、俺は考え事をやめ前を見た。すると、目の前には村があった。村の周りにはモンスター避けの簡単な柵ができている。そして、俺とメルは村の中に入った。
○
「よくぞ、いらしてくれました冒険者様。どうぞこちらへ」
村に着いた俺とメルを迎えてくれたのは、この村の村長だった。白髪で結構歳をとっていると思うが、歳の割には筋肉などがあり元気そうなおじいさんだ。
俺達は村長の家に案内された。
「依頼を受けてここに来ました、クラメルです」
「トオルです」
「さっそく、依頼について聞かせて貰えませんか?」
「わかりました」
おじいさんの話をまとめると、こんな感じだった。一週間ほど前から、畑を荒らされるようになり、三日前には家畜が被害にあった。このままでは村の子供が襲われる可能性があって依頼をしたということらしい。
「私たちに任せてください!」
話を聞き終わったメルがそう言った。二人での初クエストと言うことで興奮しているのかもしれない。
俺達は村長の家を出て、村の様子を見ることにした。
「ここが荒らされた畑みたいね」
「みたいだな」
ゴブリンに荒らされたと思われる畑は酷いものだった。野菜はほとんど残ってなく、残ったものも踏み潰されたりされている。
「どうやって侵入してきたのかしら?」
「あの隙間じゃないか?」
俺はモンスター避けの柵にある、小さな隙間を指さした。ゴブリンがどの程度の大きさかわからないが、小さいなら通れそうな程の隙間だ。
「なるほどね、隙間を通ってきたのね。なら、他にもないか見てみましょう」
俺とメルは二手に別れて、村の周りを囲む柵を見て回った。
「俺の方はなかった」
「私の方は二箇所あったわ」
メルに案内され、隙間の相手いる場所を見てみる。家畜小屋の近くに一つと、井戸の近くに一つだ。
「隙間を塞ぎましょう」
「いいのか? 一つだけ残して、そこから入ってきたゴブリンを倒すとかしなくても?」
「万が一取りこぼしがあった時、村の人に被害が出るじゃない」
なるほど、その通りだ。そこまで考えが及ばなかった。メルは本当にしっかりしている。こうして、俺とメルは隙間を塞ぐことにした。
「これで大丈夫か」
「それじゃぁ、ゴブリンを倒しに行くわよ」
「……もう行くのか?」
「だって、早い方がいいじゃない」
「まだ、心の準備が……」
だって初めてのモンスターとの戦闘だ緊張しないわけが無い。
「ほら行くわよ!」
「まじかよ」
俺はメルに引きずられながら、ゴブリンの待つ森へと入って行った。
○
森の中は静かだった。
「なぁ、静か過ぎないか?」
「おかしいわね、薬草採取で森に入った時はこんなんじゃなかったわ」
俺は耳をすませる。
──スキル『聴力強化』を獲得しました
──
スキルを使って見ても、全くと言っていいほど聞こえない。聞こえるのはせいぜい、木が風で揺れる音だ。嫌な予感がする。
──スキル『第六感』を獲得しました──
「止まって」
メルの声に俺は現実に戻された。危ない、危ない。俺もメルの見ている方向を見てみると、そこにはゴブリンがいた。数は一、二、三、……五匹だ。
「やるのか?」
「えぇ、私が三匹やるから、トールは二匹をお願い」
「わかった」
俺は右手を刀に伸ばす。
──スキル『剣術』を獲得しました──
新しいスキルを獲得した俺は、なんだかやれる気がしてきた。木の影に隠れながら慎重に気をうかがう。
そして、ゴブリンが背を向けた時、木の影から飛び出した。
「ハァッ!」
下から上に斜めにゴブリンを切り捨てる。そのまま二匹目も同じろうにして切る。ゴブリンが真っ二つに別れて地面に転がった。
「で、できた。うえっ」
俺は初めてモンスターを倒すことが出来た。しかし、あまりのグロさに朝を出しそうになった。
「そうだ、メルは?」
メルの方を見てみると、ちょうどメルも倒し終える所だった。ゴブリンの体から剣を抜き、血を振り払う。その姿がとてもかっこよかった。
「トールも終わったみたいね」
「メルも凄いな。三匹もいたのに」
「こんなの大したことないわ」
メルがゴブリンから魔石を回収しながら言う。回収した魔石をポケットに入れメルは立ち上がった。
「次は巣を潰しに行くわよ」
「えっ? 今ので終わりじゃないの?」
「ゴブリンは巣を潰さないと永遠に増え続けるのよ」
ゴキブリみたいだ。しかし、巣を見つけるにはどうしたらいいんだろうか?
──スキル『索敵』を獲得しました──
俺はた手に入れたばかりの『索敵』を使ってゴブリンの巣を探した。
「あった」
「なにが、あったの?」
メルが不思議そうに俺を見る。そんなメルには、俺が役に立つことを教えてあげよう。
「ゴブリンの巣を見つけた」
「ほんと!?」
「あぁ、こっちだ」
こうして俺とメルはゴブリンの巣へと向かった。
○
スキル
『学習』、『翻訳』、『鑑定』、『心話』、
『追跡』、『気配感知』、『隠密』、
『体術』、『変装』、『武器生成』、
『原子操作』、『武器召喚』
『防具召喚』
『武器召喚』の防具版。
『聴力強化』
聴力を強化する。
『第六感』
感覚が鋭くなる。
『剣術』
剣術が使えるようになる。
『索敵』
敵の場所や数を知ることが出来る。スキルを使って姿を隠している者は見つけられない。
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