6
窓から、眩しい太陽の光が差し込んでくる。そして、鳥達のさえずりが聞こえる。いい朝だ。
俺は隣で眠っているメルを起こさないように、ベッドから降りた。
「ふぁ」
昨日は全然眠れなかった。もちろん原因は隣で眠っているメル。昨夜、どちらがベッドで寝るか一悶着あったのだ。俺は床で寝ると行ったのだが、メルが明日の為にもベッドで寝なさいと譲らなかったのだ。最終的に押し切られて、二人でベッドを使うことになった。
「絶対、床の方が眠れた……」
俺は重い瞼を擦りながら呟いた。可愛い女の子が隣で眠っているのは、童貞の俺には地獄だった。
そんなことを思いながら階段を降りて行く。すると、料理をしているタンクさんとアーチさんを見つけた。
「おはようございます」
「おはよう。よく眠れたかい?」
「ま、まぁ」
そんな俺の反応にタンクさんがニヤリと笑う。まさか、部屋がひとつだったのも、ベッドがひとつだったのもタンクさんの仕業か?
「俺とメルは、そんな関係じゃないですよ」
「わかってる、わかってる」
タンクさんの反応はわかっていない人のそれだった。まぁ、いいや。メルみたいな美少女と眠れたんだ。許す。
「もうすぐ朝ごはんできるから、顔を洗っておいで」
「はい」
タンクさんにそう言われて、お店の裏にある井戸で顔を洗う。冷たい水がとても気持ちよかった。
顔を洗い終わって、朝ごはんを食べ始めた時、ちょうどメルが降りてきた。
「おはようございます」
「おはよう」
「おはよう、メルちゃん。朝ごはんできてるからね」
「ありがとうございます」
メルが俺の正面のイスに座った。
「いただきます」
メルがパンに手を伸ばす。その時、メルの谷間が見えた。
「ブフっ」
むせた。手で抑えたから水は飛んでない。しかし俺は見てしまった。昨日は胸当てのせいで見えなかった、二つの大きなおっぱいが作る谷間を。
「ゴホッ、ゴホッ」
「大丈夫?」
そんなことを知らないのメルは、俺を心配してくれる。きっとむせた理由を言えば殴られる。
「ちょっと、むせただけだから」
そのあとも、何度か吹き出しそうになったが。俺は無事、朝ごはんを食べることが出来た。ブラジャーとか売ってないのかな?
○
朝ごはんを食べ終えた俺とメルは、ギルドに来ていた。昨日とは違い人が溢れている。剣を持っている人、魔法使いなのか杖を持った人、色々いた。
「なぁ、俺らクエストに行かなくていいのか?」
「行きたいなら行っていいわよ」
俺が質問するとメルがクエストボードの方を指さした。
「おら、どけや」
「てめぇ、それは俺が目をつけてたやつだ!」
「早いもん勝ちだぜ?」
筋肉モリモリの男達がクエストボードの前で、ちょっとしたバトルを繰り広げていた。俺なんかが入っていけば、秒で死ぬ気がする。
「いや、やめとく」
「それがいいわ。私も死なれちゃ困るもの」
やっぱり、死ぬんだ。
「けど、どうするんだ? いいクエストとか取られちゃうんじゃないのか?」
「大丈夫よ。私たちが受けるような簡単なクエストはあれが終わった後で、職員の人が貼ってくれるのよ」
「あぁ、なるほど」
だから、のんびりしているのか。と俺は納得した。こうして、ギルドに備え付けられているイスに座って待っていた。するとしばらくしてメルが言った。
「終わったから、行くわよ」
「お、おう」
メルに引っ張られながら、クエストボードに向かう。職員さんが貼り付けていったものを読んでいく。どれもH、I、Jなどの低ランクのクエストばかりだ。
「で、どれにするんだ?」
「これなんてどうかしら?」
メルが沢山ある紙の中から一枚を取り出した。どれどれ。
「ゴブリンの討伐、ってこれGランクじゃん!」
「そうね」
そうねって、確かに受けられなくはない。クエストはひとつ上のランクまで受けれるらしい。俺がJ、メルがH、俺達はパーティーを組んでいるからGランクのクエストまでなら受けれることになる。
「いきなり行けるかなぁ」
「昨日の『体術』を見た感じ大丈夫だと思うわ」
「えっ?」
「どうしたの?」
「俺って素手で戦うの?」
「違うの?」
俺はてっきり剣かなんかを貸してくれるのかと思っていたけど、どうやらメルは俺が素手で戦うと思っていたらしい。つまり、武器がない。
「どうする?」
「どうするって言われても、やるしかないわよ」
だってお金がないもの、とメルは続けた。剣を使ってバッタバッタと敵を倒してみたかった。いや、それより素手で戦うのが怖い。
──スキル『武器生成』を獲得しました──
そう思っていると頭の中で声がした。どうやらスキルを獲得したらしい。それも『武器生成』、今の俺に必要なものだ。
「メル、『武器生成』を覚えたんだけど……」
「ほんと!? あっ、けど『武器生成』は材料がなきゃ作れないわ……」
メルがしょんぼりとする。材料さえあれば……。
──スキル『原子操作』を獲得しました──
また、声がした。しかし、今回はこれだけでは終わらなかった。
──『武器生成』と『原子操作』からスキル『武器召喚』を獲得します──
二つのスキルを合体するってことか? 俺は試しに『武器召喚』とやらを使ってみた。
「うおっ」
俺の目の前に突然、魔法陣が現れた。
「な、何をしたの?」
「なんか『武器召喚』ってやつを使ってみたんだ」
「トール、あなためちゃくちゃだわ」
メルが呆れてしまっていた。俺は魔法陣に手を入れてみる。魔法陣の中で手を振り回していると、何か硬いものに当たった。俺はそれを引っ張る。すると中からは刀が出てきた。
「これは武器なの?」
俺が刀を取り出すと、メルが不思議そうに首を傾げた。この世界に、刀はないのだろうか?
「これは俺の国の武器だよ。刀って言うんだ」
確かスキルを発動させた時、刀を想像していた気がする。俺は鞘から抜いてみて確認してみる。
「本物だよな?」
「色々言いたいことはあるけど、これでとりあえずクエストを受けれるわね」
「おう」
俺達の初クエストが決定した。
○
スキル
『学習』、『翻訳』、『鑑定』、『心話』、
『追跡』、『気配感知』、『隠密』、
『体術』、『変装』
『武器生成』
武器を作ることが出来る。鍛冶スキルの下位互換。
『原子操作』
原子を操作して、そのものを出すことが出来る。
『武器召喚』
想像した武器を召喚することが出来る。伝説の武器などは召喚出来ない。
読んでいただきありがとうごさいます。書き始めたばかりなので、おかしな点があると思いますが、頑張って面白くなるように書いていくので、引き続きよろしくお願いします。