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3.5

 部屋で待機を命じられた僕は、部屋にある豪華な椅子に深く腰をかけていた。どうやら全員のスキルを確認して、それぞれどこに配属するのか決めるらしい。

 しかし僕はそんなことより、透のことを考えていた。透はスキルが少なくてショックを受けていないだろうか?


 僕はメイドさんにいれてもらった紅茶をすする。


 一条はスキルが五十個あるのに対して、透は確か二個だった。他の人も少なくても三十個はスキルを持っていた。透はあまりにも少なすぎる。何故だ?


「そうだ」


 僕は立ち上がり、透の部屋に行こうとした。ちょうどその時、部屋のドアがノックされる。


「どうぞ」

「失礼します」


 メイドさんだった。どこに振り分けられるか決まったのだろうか?


「オカモト様、中庭までお越しください。配属先が決まりました」

「わかりました」


 予想通りだった。僕はメイドさんに案内されて中庭に向かう。


 僕が中庭に行くと、そこには純白の鎧に身につけた騎士の人や真っ黒なマントをつけている魔術師らしい人がいた。他にも医者? のような人もいる。


「透はいないのか?」


 周りには僕の他にもメイドさんに呼ばれたクラスメイト達がいる。しかし、透の姿を確認することは出来なかった。


「これから君たちの配属先を発表して行く。発表されたら、各々指定の場所に行ってくれ」


 透を探していると、騎士が言った。指定の場所というのは配属先の人の所だろう。


「右から、騎士、魔術師、隠密、医療、研究だ」


 配属されるのが楽しみなのか周りが騒がしくなる。


「では、番号順に発表する」


 出席番号順で発表されるようだ。これなら透が本当にいないのか確認できる。一番から順に配属先を発表されていく。


「七番オカモト、騎士」


 僕も呼ばれた。僕は一番端にいる騎士の所に行った。

 その後も、次々に配属先が発表されて行く。


「よっ、岡本も騎士なのか。一緒だな」


 僕が透を探していると、後から来た一条が声をかけてきた。


「一条も一緒なんだね。ところで、透は見なかった?」

「透? いや、見てないな」


 一条が見ていないと首を振る。ならばと思い、僕は透の配属先を聞くため耳をすませて待つ。しかし、透の順番になってメイドさんが発表をしようとしている騎士に近づいた。


「透の番だよな? 何かあったのか?」

「わからない」


 僕はスキルを使って聴覚を強化しメイドさんと騎士の会話を盗み聞きする。


 ──ミナミ・トオルが部屋にいなかっただと?


 ──はい、私が部屋を訪れた時にはもう……。


 ──逃げたのか? しかし何故?


 ──それが、全くわからないのです。


 僕は耳を疑った。透が逃げた? 魔王を倒す責任感に負けてしまったのだろうか? しかし、ここ数日話して見た感じそんな様子はなかった。


「三十二番モリグチ、研究」


 メイドさんとの話を終えた騎士が発表を再開した。もちろんこの場にいない透を飛ばして。

 そして、そのまま配属先の発表は終わった。クラスメイトの何人かも不思議に思っているようだったが、与えられた部屋に戻っていく。


「おい、呼ばれなかったよな?」

「うん、透だけ飛ばされたね」


 僕と一条は発表が終わったあとも、中庭に残っていた。


「それと気づいたか? 女子も一人いなかったぜ」

「そうなのかい? 一体誰が?」

「十四番の外崎だな」

「よく気づいたね」


 僕は素直に感心した。透だけに気を取られていた僕は気が付かなかった。


「ふっ、オレは女子をしっかり見てるからな」


 一条の言葉に若干引いた。さっきの感心を返して欲しい。


「けど、呼ばれていたよね?」

「そうだな。確か騎士だ」


 さすが一条、配属先も覚えているとは。


「僕は透を探そうと思っているんだけど、一条も一緒に探してくれないかな?」

「おう、オレも探そうと思ってたところだ」


 僕達は王城の中に戻って、透をさがすことにした。そして、王城に入ろうとした時だった。


「きゃああああああああ」


 と、王城から悲鳴が聞こえてきた。


「今の悲鳴だよな?」

「うん、悲鳴だね」


 僕と一条は駆け出した。



 悲鳴を上げたのはメイドさんだった。王城に入った僕と一条は、部屋の前で腰を抜かして地面に座り込んでいるメイドさんを見つけた。


「あっ、あっ」

「落ち着いてください。何があったんですか?」


 僕はメイドさんを落ち着かせる。


「あ、あれ、し、したいが、ひとがしんでる」


 メイドさんが部屋の中を指さす。僕はメイドさんの指の先を目で追う。するとそこには死体があった。

 服はビリビリに破かれ全裸になった死体だ。腹が切り裂かれていて内臓が飛び出ている。顔など原型をとどめていない。酷いものだった。


「うえっ」


 僕はスキルのおかげで大丈夫だったが、一条はあまりのグロさに吐きそうになった。夕食をまだとっていないのがせめてもの救いだ。


「なんで……なにがあったんだ」


 そして、僕は気づいてしまった。


「ここ、透の部屋じゃないか……」

「そ、そうなのか? これを透がやったのか?」

「それはわからない」


 僕は部屋の中に入る。部屋の中には凶器と思われるナイフが転がっていた。


「岡本、これ外崎のだ……」

「なんだって……」


 一条が服と一緒に地面に落ちていた生徒手帳を僕に渡してくる。

 その時、廊下から複数の足音が聞こえてきた。


「どうした? 何があったんだ?」

「なんだったんだ、さっきの悲鳴?」


 数人の生徒が部屋に来てしまった。そして、この惨状を目の当たりにする。


「おい、なんだよこれ!」

「死んでるのか?」

「いやぁぁぁ」


 部屋の中を見てしまったクラスメイト達が悲鳴をあげたり、吐いたりする。


「おい、ここ透の部屋じゃないのか?」

「まさか、透がやったのか?」


 僕はどうすることも出来ず、ただそこに立ち尽くした。

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