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 俺は異世界で捨てられてしまった。これからどうしよう。俺は広場の噴水に腰をかける。


「はぁ」


 右も左も分からない。それにお金もない。お金がなければ、ご飯も買えないし。宿にも泊まれない。


「せっかく異世界に転移したのに……あんまりだ」


 そう思っていると、目の前を冒険者らしき一団が通り過ぎて行った。異世界には冒険者がいるんだな。モンスターとかを倒してお金を貰うんだろうか?


「それだっ!」


 俺は立ち上がり、叫んでしまった。周りから視線が集まる。恥ずかしいことをした。

 しかし、この状況を脱する方法を思いついた。


「冒険者になって稼げばいいんだ。そうと決まれば」


 俺は、さっきの冒険者達を探す。冒険者達をストーキングしてギルドに行こうと思ったのだ。


 ──スキル『追跡』を獲得しました──


 スキルが増えた。『追跡』か使えそうだ。俺は手に入れたばかりのスキルを使って冒険者達のあとを追った。



 ギルドの中は人があまりいなかった。クエストかなんかに行ってるのだろうか? 


「すみません、冒険者になりたいんですけど」


 俺は受付の女性に声をかける。やはり、異世界の女性はみんな可愛い。


「はい、冒険者登録ですね。それでしたら銀貨五枚になります」

「えっ?」

「どうされました?」


 書類をカウンターに置いた女性が不思議そうに首を傾げた。

 どうやらお金を取られるらしい。銀貨五枚がどのくらいの価値なのかは分からないが安くはないと思う。


「あ、いや、その」

「用がないなら避けてもらえる?」

「うおっ」


 俺がキョドっていると後ろから声をかけられた。振り返ってみるとそこには皮の胸当てを装備した少女がいた。腰には剣をぶら下げている。俺と同い年ぐらいだろうか?

 少女がカウンターに置かれた書類を覗いてくる。


「冒険者登録、もしかしてあなたお金ないの?」

「うっ、無いわけでは……」


 日本の札と硬貨があるので嘘はついてない。


「そう、ならはやく登録しなさいよ」

「すみません、嘘です。お金持ってません」


 少女がニヤリと笑った。俺がお金を持っていないことを知って笑うとは、なんて性格の悪いやつだ。


「すみません、お金を貯めてからまた来ます」


 俺は受付の女性に一言謝り、帰ろうとした。


「ちょっと待ちなさいよ!」


 そこを少女に止められる。


「な、なんですか?」

「お金、貸してあげる」

「まじで?」


 なんて優しい人なんだ。俺は感動しかけた。いや、裏があるかもしれない。契約書みたいなのに名前を書かせて高い利子をつけて返させるとか。スキルを使ってみるか?


「えぇ。その代わり、冒険者になったら私とパーティーを組んでもらうわ」

「えっと、そんなんでいいの? 高い利子をつけて返させるとかしない?」

「そんなことしないわよ!」


 俺は少女の言葉を信じてスキルを使うのをやめた。


「それじゃ、遠慮なく」


 少女から銀貨を五枚受け取り、受付の女性に渡す。


「では、こちらの書類に必要事項を記入してください。文字がかけなければ代筆しますが?」

「たぶん、大丈夫だと思います」


 俺は受付の女性からペンを受け取り、書類を見る。『翻訳』のスキルのおかげで読むことができる。


「うん、書けるな」


 流石、俺のスキル。書くこともできた。知らないはずの文字なのにスラスラ書ける。日本語を頭に浮かべると、頭の中で変換される感じだ。そんな不思議な感覚に戸惑いながらも俺は書類の記入欄を埋めて行った。


「はい、これで登録は完了です。これをどうぞ」


 書類を提出すると、プレートを渡された。


「それは冒険者であることを示す物です。無くさないようにお願いします」

「わかりました」

「あっ、ギルドの説明は私がするからいいわ」

「かしこまりました。それでは」


 こうして俺は冒険者になることが出来た。



 俺はお金を貸してくれた少女に連れられて、ギルドの隅の席に座らされた。


「冒険者デビュー、おめでとう。私はクラメル、メルって呼んでね。これからよろしくね」

「さっきはありがとう。俺は美波透、俺も透って呼んでくれ。よろしく」

「よろしく、トール」


 俺はメルと握手をする。小さくて柔らかな手だった。


「それじゃあ、ギルドの説明を簡単にするわね」


 メルに手を引かれてギルド内を見て回る。どうも、今まで女の子と手を繋いだことがなかった、十六歳童貞です。


「これはクエストボードよ。ここでクエストを選べるわ」


 最初に案内されたのは受付の隣にあるクエストボードだった。ボードには何枚かの紙が貼ってる。


「自分のランクの一個上まで受けることができるわ」

「なるほど、ってランク?」


 俺がそう言うとメルはしまったというような顔をした。


「まず、ランクから説明するべきだった……。えっと、ランクにはA〜Jまであるの、これはクエストをクリアしていくと上がるようになってるわ」


 A〜Jか結構多いな。十個もある。

 そんな感じでギルド内を案内してもらった。


「それじゃぁ、明日からクエストを受けるわよ」

「明日から?」

「だって今日の分は残ってないもの」


 そう言えば、クエストボードには少ししか紙が残っていなかった。しかもどれも高難易度。あれ? だとしたらやばくない? お金ないじゃん。


「どうかしたの?」


 またお金を借りるか。いや、それはできない。これ以上、メルに迷惑はかけられない。


「いや、なんでもないっす」

「そう? なら今日は宿に行って明日の準備をするわ」

「メルが泊まってる宿に行くの? 俺も?」

「当たり前じゃない。色々準備しないといけないもの」


 これまたお金がかかりそうだ。


「ほら、行くわよ」


 メルが立ち上がって、さっさと行ってしまうので俺は急いで追いかけた。



スキル


『学習』、『翻訳』、『鑑定』、『心話』


『追跡』

 対象の人物が通った道がわかる。

 遅れました。

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