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 結局俺は、メルと稼いだなけなしのお金を使ってどうにか宿に泊まることが出来た。そして、俺は朝早くベルヌーイ邸に戻った。

 そこまでは良かった、そこまでは。


「何故こうなっているのか、わかりますか?」


 俺の目の前にいるテスラ様が、ゴミでも見るような目で俺を見る。テスラ様の冷ややかな視線を受けて俺は考えた。

 朝早くテスラ様のもとへ帰った。そしたらテスラ様が起きていて、何故か俺は正座させられている。

 正座させられているからには、怒られる理由があると思うのだが、全くもって思い当たる節がない。


「ごめんなさい。わからないです」


 テスラ様から怒りがひしひしと伝わってくる。顔を上げるとテスラ様の顔を仰ぎみると、目元にはクマができている。それに若干、目元が腫れている気がする。


「テスラ様は、トール様が昨日戻られなかったことにお怒りなのです」


 テスラ様の専属のメイドであるキルヒさんが教えてくれた。そんなキルヒさんの目も心なしか冷たいように思える。でもなんで帰らなかったことに怒ってるんだ?


「私に雇われて早々に、朝帰りとはいいご身分ですね」


 テスラ様の言葉がトゲトゲしい。


「テスラ様は、トール様の部屋を用意して下さっていたのですよ」

「えっ」


 ということは、帰ってくると思っていた俺が帰ってこなくて、怒っていると。そういうことだろうか?


「で、でも、帰っていいのかわからなくて……」

「私、帰ってきてくださいって言いませんでしたっけ? もしかして言い忘れてましたか?」


 俺は無言でウンウンと頷く。多分、おそらく、きっと、言ってない。俺は昨日のことを思い出す。


「そう言われると、言ってなかった気がしてきました。もういいですこの話は終わりにしましょう」



 俺は正座をやめて立ち上がる。ちょっと足が痺れていた。


 ──スキル『電気耐性』を獲得しました──


 足の痺れは電気に関係ないと思うが、何故か『電気耐性』のスキルをゲット出来た。


「話は変わりますが、トールは学院に通ってみるつもりはありませんか?」


 さっきとは打って変わって、テスラ様は笑顔で俺に聞いてきた。


「学院ですか?」

「そうです、学院です」


 確かに異世界の学院がどんなのか気になる。しかし、学院に通うってなったらテスラ様の護衛ができなくなってしまう。


「テスラ様の護衛があるので……」

「そう言うと思いました。ですけど大丈夫です。私も学院に通いますんで」

「て、テスラ様も?」

「そうです」


 ということはテスラ様と一緒に学院に通うということだろうか? それなら毎日喜んで登校する。


「いつからですか?」

「来週からになります」

「来週ですか!? いくらなんでもはやすぎないですか?」

「はい、本来はキルヒに付き人をやってもらう予定でしたが、それでは舐められてしまいそうなので」


 うーん。どういうことだろうか? テスラ様が小さくて可愛いからだろうか? ならば俺が側にいて舐めてきた奴をぶっ飛ばすしかないな。


「トールは私の『神眼』のことを忘れてませんか? あなたが考えていることは全部わかるんですよ?」


 そして、テスラ様は続ける。


「そうではなくてですね、私は最近家督を継ぎました。なので他の貴族達に侮られてしまうのです。それは避けなくてはいけません」

「なるほど」


 やっと理解した。まだ若く、見た目も小さいテスラ様だけだと学院に通っている他の貴族達に舐められてしまうと言うことか。

 強くて逞しい俺がいればそんなことはないので、安心して学院に通えると。


「後半の言葉はさておき、どうですか? 通ってみませんか?」

「ぜひ、通わせてください」


 これで毎日テスラ様と一緒にいられる。


「わかりました。では、明後日に入学試験があるので忘れないでくださいね」


 テスラ様の言った言葉に、俺は言葉を失った。


「…………」

「どうしたんですか?」

「入学試験があるんですか?」

「もちろんです。私は既に受けてしまいましたが……トールなら大丈夫だと思いますよ」


 テスラ様が入学試験の内容を思い出しながらそう言った。


「ちなみに試験の内容って」

「筆記と実技の二つです」

「ですよね」


 俺は筆記があることにガクリと肩を落とした。文字は『翻訳』のおかげです読み書き出来るから問題ないのだが、歴史みたいな科目があれば俺はおしまいだ。


「もしかして、トールは勉強が苦手なんですか?」


 俺は黙ってコクリと頷く。もちろん異世界での話だ。元の世界では、それなりにいい成績だった。と、思いたい。


「それは困りましたね」


 テスラ様が顎に手を当てて考える。テスラ様は小さいので、小さい子供が探偵ごっことかをして遊んでいるようにしか見えない。それが可愛くて、可愛くて仕方ない。


「トール様……」


 テスラ様を変な目で見てしまったためか、キルヒさんに注意された。


「仕方ないですね」

「トール様を学院に入学させるのは諦めるんですか?」

「いえ、今からトールには入学試験に向けて勉強をしてもらいます」

「はい」


 テスラ様と同じ学院に通うためだ。仕方ない。テスラ様との登校風景や学院での生活風景を想像すると、それだけでやる気が出てくる。


「キルヒ、勉強の準備をしてください」

「かしこまりました」

「トールは私の部屋に来てください。私が直接、勉強を教えてあげます」


 テスラ様とマンツーマンでの個人レッスン。なんか、やる気が出てきた。


「ありがとうごさいます」


 この後、テスラ様の鬼のような特別講習が始まることを俺はまだ知らなかった。



 テスラ様の授業が終わる頃には、俺はヘトヘトになっていた。

 ここまで長時間、勉強していたことは未だかつて無いと思うほど勉強した。国語、数学と始まり、歴史、魔術と勉強していった。


「お疲れ様でした。今日はここまでにしておきます」


 テスラ様の言葉に、俺は机の上に突っ伏した。そして、テスラ様の言葉に違和感を覚えた。


「今日は?」

「もちろん明日もありますので覚悟しておいてください」

「い、いやだ」


 さっきまでの授業を思い出し、俺は震え上がった。


「試験は明後日なんです。時間がないんです」

「うぅ」

「明日は歴史と魔術だけですから、頑張ってください」

「わかりました」


 俺は明日のことを想像して、憂鬱になるのだった。



スキル


『学習』、『翻訳』、『鑑定』、『心話』、

『追跡』、『気配感知』、『隠密』、

『体術』、『変装』、『武器生成』、

『原子操作』、『武器召喚』、

『防具召喚』、『聴力強化』、『第六感』、『剣術』、『索敵』、『魔術』、

『体力強化』、『魔力強化』、

『詠唱省略』、『高速思考』、『地図』、

『聖剣創造』、『食事不要』、『帰還』、『転移』、『偽装』、『無限空間』、

『毒耐性』


『電気耐性』

 電気に対する耐性を持つ。

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