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 俺達が帝国に着いたのは、一週間後の夜だった。道中モンスターに襲われたり、盗賊に襲われたりと色々あったが無事に帝国に着くことが出来た。


「皆さんありがとうごさいます。ここまで帰ってこれたのは皆さんのおかげです」


 テスラ様が綺麗なお辞儀を披露する。


「いいんですよテスラ様、これが我々の使命ですから」


 ジルコさんがみんなを代表して言う。本当にその通りだ。指名手配されて行き場のない俺を雇ってくれたテスラ様のためなら、死んでもいい。


「ありがとうごさいます。当分、護衛の任務はないと思いますので、皆さん英気を養ってください」

「了解です。それじゃあ、飲みに行くか!」


 そう言うと、ジルコさん達が飲み屋に向かうので俺もついて行く。


「トールは話がありますので私についてきてください」

「はい、わかりました」

「飲み屋で待ってるから、テスラ様との話が終わったらすぐ来いよ!」

「わかった」


 ジルコに返事を返し、俺はテスラ様のもとに行く。


「歩きながら話しますね」

「はい」


 テスラ様の後ろをついて行きながら、ベルヌーイ邸の中を歩く。小人族の血が混じっているテスラ様の背中はとても小さい。


「トールはベルヌーイ家に正式に雇われるということでいいんですよね?」

「そのことなんですが……」


 俺は王国でのことを話すことにした。テスラ様は俺が指名手配されていることを知らないと思う。隠し事をするのは嫌だ。


「どうかしたんですか?」

「実は俺、王国で指名手配されているんです」


 勇気をだして俺は言った。これを知ったテスラ様が、雇わないと言っても仕方ない。


「それがどうかしましたか?」


 しかし、テスラ様は俺の予想を裏切った。


「えっ!? いや、指名手配ですよ? 犯罪者ってことなんですよ?」

「あなたが罪を犯したんですか?」

「お、犯してないです」


 テスラ様は平然と告げる。


「なら、問題ありません」

「俺の言葉を信じるんですか?」


 俺が逆の立場だったら信じられない。指名手配されいるなんて聞けば犯罪者だと決めつけて、その人の話は信じない。


「私の『召喚』に応じたんです。信じないわけがありません」

「……」

「それに、私達を助けてくれた人を疑うような、裏切るような真似はしません」

「テスラ様……」


 それに比べて俺は、信じてくれないかもしれない、捨てられるかもしれないと、疑ってばっかりだ。


「それでは、雇われるってことでいいですね?」

「お願いします」

「こちらこそよろしくお願いします」


 この後は、テスラ様の部屋で給料や仕事のことについて話した。

 こうして俺は、テスラ様の騎士になることが出来た。



 俺はテスラ様との話が終わり、飲み屋へと向かった。ジルコさんに場所を聞き忘れたので、『地図』を使って飲み屋を片っ端から訪ねる予定だったのだが、一件目で見つかった。


「お待たせしました」


 俺は四人用のテーブルを囲んでいた三人の所に向かった。


「遅かったな」

「そうだ、おそいぞ、とーる」

「で、どうだったんだ?」


 ジルコさんとアクトルさんは大丈夫だったが、ガスターはベロンベロンに酔っていた。顔が真っ赤だ。


「ベルヌーイ家に正式に雇われることになりました。これからよろしくお願いします」

「良かったな」

「おいわいら、のめ、のめ」

「おい、ガスターはそろそろやめた方がいいんじゃないか?」


 呂律の回らないガスターをアクトルさんが止める。そこで俺は思った。


「あのジルコさん。この国ではお酒って何歳から飲めるんですか?」

「十五歳からだな。もしかして、飲めないのか?」

「いえ、十六なんで飲むことはできます。けど飲んだことないんで、飲めるかわからないです」

「おー、おさけでびゅーだな。すいませーん。お酒くださーい」


 ガスターが俺の分のお酒を頼んでくれる。これで俺も大人の階段を登る。


「無理するなよ」

「飲めなかったら、飲んでやるから」

「いっき、いっき」


 ジルコさんとアクトルさんが心配してくれる。ガスターは無視だ。


「では、いただきます」


 俺はゴクッと一口お酒を飲む。胸のあたりが熱くなった。


 ──スキル『毒耐性』を獲得しました──


 アルコールって毒扱いなんだ、ってそれよりも、


「苦ァ……」

「はははは、まだ苦いか? 歳を取ればこれが美味く感じるんだけどな」

「俺も最初は苦いと思ったな……」

「ふっ、おこさまだな」

「うぅ、苦い」


 俺は串に刺さった肉を食べて口の中の苦味を消す。


「どうする? 水でも頼むか?」

「これだけは飲もうと思います」

「わかった」


 俺はチビチビとお酒を飲む。


「そうだトール。テスラ様から仕事について聞いたか?」

「えっと、大体は」


 お酒と串肉を交互に食べたり飲んだりしているとそんなことをジルコさんが聞いてきた。


「そうか、トールは付き人について聞いたか?」

「付き人ですか? 聞いてないです」


 付き人って、身の回りの世話をする人だよな? メイドさんの仕事じゃ?


「聞いてないか……、テスラ様は決めてないのか?」

「付き人って、メイドさんの事じゃないんですか?」

「あぁ、合ってるよ。でも今言ってるのは──」

「オロオロオロオロオロオロオロオロオロ 」


 ジルコさんの声がガスターの嘔吐の音によってかき消される。


「おいっ!」

「だからやめとけと」

「おえっ」


 俺はつい、もらいゲロしそうになった。



 俺達はお店の人に謝罪して、お会計をしてから外に出た。夜の風がとても涼しくて気持ちいい。空を見上げると、星がとても綺麗に輝いていた。


「まったくガスターは……」

「ごめんなさい」


 吐いたことによって、酔いが覚めたガスターがガックリと肩を落として項垂れている。


「まぁ、今回の所はガスターの奢りってことで許してあげよう」


 アクトルさんが言うと、ジルコさんも頷く。


「ガスター、ごちそうさま」

「うぅ、トール、お前まで」


 ガスターは何か言っているが、飲みすぎて他の人に迷惑をかけたやつが悪い。


「それじゃ、今日はこの辺で解散するか」

「そうですね」

「お疲れ様でした」


 ジルコさんとアクトルさんと飲み屋の前で別れた。


「それじゃ、また明日な」

「また明日」


 ガスターと少し行った先の角で別れた。そして、俺は気づいてしまった。


「俺、どこで寝ればいいんだ?」


 寝る場所がなかった。


「どうしよう……」


 そんなことを思っていると、ふと一人の女の子が脳裏に浮かんだ。


「……もう、忘れよう」


 その後、宿屋に行けばいいと思いつき俺は『地図』を使って宿屋に向かった。



スキル


『学習』、『翻訳』、『鑑定』、『心話』、

『追跡』、『気配感知』、『隠密』、

『体術』、『変装』、『武器生成』、

『原子操作』、『武器召喚』、

『防具召喚』、『聴力強化』、『第六感』、『剣術』、『索敵』、『魔術』、

『体力強化』、『魔力強化』、

『詠唱省略』、『高速思考』、『地図』、

『聖剣創造』、『食事不要』、『帰還』、『転移』、『偽装』、『無限空間』


『毒耐性』

 毒に対しての耐性ができる。

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