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13

 俺は早朝、王都コロナに転移した。景色が何も無い平原から、王都の城壁に一瞬で変化した。


「これが『帰還』か……」


 しかしここはまだ王都の外、ここから王都の中まで移動しなくてはならない。俺は城門に向かう。


「やっぱりいるか」


 俺の視界には純白の鎧をまとった二人の騎士の姿が映った。いつもなら、門番は騎士ではないのだが、検問が厳しくなっているらしい。


「いけるか?」


 俺はポケットから冒険者プレートを出した。名前の所にはしっかり美波透と書いてある。間違いなく捕まるな。


 ──スキル『偽装』を獲得しました──


 これなら入れるかもと思い、プレートに『偽装』を使う。名前の所をトールに変えた。俺は騎士に話しかけた。念の為口調も変えておこう。


「通りたいのだか?」

「なんだ、見ない格好だな。冒険者か?」

「うむ」

「なら、冒険者プレートを出しな」


 俺は先程の書き換えた冒険者プレートを門番の騎士に渡す。それを受け取った騎士は怪しむように質問してきた。


「Jランク? そんないい装備してるのに?」

「うむ、我は元は傭兵をやっていた」


 慌て過ぎて一人称がおかしくなった。いいから、はやく通してくれ!

 騎士がもう一人の騎士にプレートを渡す。見落としがないのか確認しているのだろうか?


「問題ないな」

「よしっ、大丈夫だ。通っていいぞ」

「うむ」


 俺は堂々と門から王都に侵入した。



 俺が食料を買い終えて帰ろうとした時だった。ん? これ、どうやって帰るんだ?

 『帰還』は一度行ったことのある街に移動できるだけで、テスラ様の所には帰れない。『転移』もそうだ。好きな場所と言ってもどこら辺か分からないと帰ることが出来ない。


「なんで、誰も気が付かないんだ……」


 それだけ食料問題が深刻だったということだろうか? そっちばかり気を取られてしまい帰る方法がないのに、誰も気がつかなかった。


「とりあえず食料はしまっておくか」


 俺は先程ゲットしたスキル『無限空間』に食料を入れた。『無限空間』とは、俗に言うアイテムボックスのことだ。

 そして、いつの日かと同じように噴水の縁に腰をかける。こうしているとメルのことを思い出した。


「そう言えばメルはどうしてるんだろ」


 メルは誰ともパーティーを組めないでいた。そして、ようやくパーティーを組めたのに俺が指名手配され拒絶された。メルは他の人とパーティーを組んでるんだろうか?


「なんか、やだなぁ」


 メルに捨てられた日のことを思い出して涙が出てきた。


「はやくこんな街出ていこう」


 そう思って立ち上がった時だった。視界の隅にメルが映った。見間違えかと思ったが俺がメルを見間違えるはずが無かった。短い間でも好きだったんだから。しかし、


「なんだよ……」


 メルの隣には男がいた。俺と同じくらいの年齢の男だ。メルがその男と共に街の中に消えて行くのを俺はただ見ていた。


「メルは俺なんかいなくても良かったんだ、パーティーを組めれば誰でも良かったんだ、俺は必要じゃ無かったんだ」


 悲しくなり、悔しくなり、何が何だかわからなくなってきた。


「なんかもう、どうでもいいや」


 俺は『神鳴』の魔法陣を展開する。街の人達が突然出現した魔法陣に驚く。『神鳴』が発動すれば多くの人が死ぬ。しかし、俺にはもうどうでもよかった。


「なんだあれ!」

「魔族が攻めてきたのか!?」

「騎士はどこだ!」


 そして、魔法陣が完成するその時だった。俺の体を光が包んだ。暖かく、まるで包み込むような光だ。魔法陣がかき消される。


「なんだこれ?」


 次の瞬間、視界が切り替わった。そこは豪華な馬車の中だった。目の前にはテスラ様と、メイドさんがいる。


「えっ、さっきまで王都にいたはずなのに」

「私が呼び戻したんです」


 目の前のテスラ様が言った。


「なん、で」

「私の『神眼』でトールの様子を見ていて、このままでは危険だと思ったからです」


 確かに俺は王都で『神鳴』を放とうとした。それを見られていたと言うことだ。


「だ、だけどどうやって?」

「私のスキル『召喚』です。私に忠誠を誓う者であれば、どこにいても私のもとに瞬時に呼び出すことができます」


 さっきのを見られた、また捨てられる。こんなに危険な奴を傍においておけるはずがない。

 俺は捨てられるの恐怖に震える。


「勘違いしないでください。私はあなたを捨てたりなどしません。言ったでしょう? 『召喚』は私に忠誠を誓っている者しか呼び出せないと」

「えっ?」

「私が忠誠を誓っている者を捨てるはずがありません。あと、これは屋敷に戻ってから言おうと思ったんですが、ベルヌーイ家に正式に雇われませんか?」

「いいんですか?」

「えぇ、もちろんです。その代わり、帝国までしっかり護衛してくださいね」


 俺は鎧の魔法を解除して、馬車の中で跪く。


「ありがとうごさいます」


 テスラ様の小さな手が俺の頭に触れ、テスラ様の胸に優しく包み込まれる。


「整理がついたらいつか、全部話してくださいね」



 そして、立ち直ったあと俺は馬車から出た。馬車から降りるとガスターが待っていた。


「おい、トール何があったんだ? 馬車の外まで泣き声聞こえてたけど、って鎧脱いだのかお前!?」


 どうやら心配して馬車の前で待っていてくれたらしい。


「あぁ、なんかいい意味でどうでも良くなった」

「そうなのか? まぁ、知らねぇけど食料はちゃんと買ってきたんだろ?」


 ガスターは頬をかきながら、ぶっきらぼうに言った。

 俺にはこれがガスターなりの照れ隠しなのだとわかった。


「買ってきたよ」


 ほらっ、と『無限空間』から食料を取り出してみせる。


「お、おま、『無限空間』まで使えんのかよ! テスラ様並にやばいな」

「テスラ様もやばいんだ……」


 まぁ、『召喚』やら『神眼』やらとヤバめのスキルを持ってるのは確かだ。


「さぁ、準備して出発するぞ、遅くなったからな」


 俺のせいで結構な時間を食った。

 俺はガスターと一緒に、ジルコさん達の元に向かう。


「トール、沢山泣いたな」

「はい、沢山泣きました」

「鎧はもういいのか?」

「はい、こっちの方がはやく動けますから」

「これから、テスラ様の騎士としてよろしくなトール」


 ジルコさんとアクトルさんが俺を迎えてくれる。


「はい、よろしくお願いします」


 こうして俺達は朝食をとってから帝国へと出発した。



補足


『神眼』

 遠くのものを見たり、人の心を見たり、その人の能力を見たりできる。


スキル


『学習』、『翻訳』、『鑑定』、『心話』、

『追跡』、『気配感知』、『隠密』、

『体術』、『変装』、『武器生成』、

『原子操作』、『武器召喚』、

『防具召喚』、『聴力強化』、『第六感』、『剣術』、『索敵』、『魔術』、

『体力強化』、『魔力強化』、

『詠唱省略』、『高速思考』、『地図』、

『聖剣創造』、『食事不要』、『帰還』、『転移』


『偽装』

アイテムなどを偽装できる。


『無限空間』

 アイテムボックス。

 誤字報告ありがとうごさいます。

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