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12

 王国を抜け出した俺は、帝国に帰る途中であるテスラ様の護衛として雇われていた。


「ガスター、一匹抜けた!」


 場所は王国から離れた平原。俺達はウルフの群れと戦っていた。

 俺のわきをウルフが一匹通り抜けて、テスラ様のいる馬車に向かっていく。


「まかせろ! どりゃあっ!!」


 俺の後ろにいたガスターが、俺の取りこぼしたウルフを両断する。


「ありがとう」

「いいってことよ」


 俺は正面のウルフに目を向けた。他のウルフよりも一回り大きく、恐らく群れの長だ。


「ガルルルル」


 ウルフは警戒して襲ってこない。群れの長だと思われるだけあって知性がある。そのままジリジリと見つめ合いが続く。


「トールっ! 反対側からもウルフの群れが!」

「なんだって!?」


 ガスターはそう言って、反対側に加勢しに行った。

 どうやら時間稼ぎをしていたらしい。早く決着をつけなければ。しかし、俺が攻撃をすれば何匹かのウルフがガスター達のもとに行ってしまう。


「アオーーン」


 人手が足りない。人手が足りないなら。


 ──スキル『分身』を獲得しました──


 増やせばいいんだ。俺はスキルを発動させて、自分の分身を二体作る。それに驚いたのかウルフが目を見開いた。


「来ないならこっちから行くぞ!」


 俺は分身達と共にウルフ目掛けて走り出す。


「グルァ!!」

「『紫電一閃』!」


 ウルフが牙を剥き出しにして、俺に襲いかかるが、俺の光速の一撃の方が速かった。襲いかかってきたウルフを横に切る。


「ギュブ」


 それと同時に、分身達もウルフを討伐していた。分身達が役目を終えて俺のもとにかえる。


「トール、大丈夫だったか?」


 戦い終えた俺のもとにガスターが駆け寄ってきた。どうやら馬車の反対側も終わったらしい。


「あぁ、それより、いつもこんなにモンスターと会うのか?」

「いや、普通こんなにモンスターとは戦わねぇな。けど、今回だけはモンスターが沢山出てくんだ」

「テスラ様が狙われてるとかないのか?」

「あるかもしれねぇ、けどここまでモンスターを思い通りに操れるとは思えねぇんだよな」

「テイマーとかかな?」


 俺は元の世界のゲームや小説のことを思い出してそう呟いた。


「いや、こんなにモンスターを操れるテイマーはいないと思う」

「そうか……」

「まぁ、お前がいるから心配ないけどな。頼りにしてるぜトール!」

「いや、俺だって最強じゃないからな」


 そんなことを話しながら、俺達はテスラ様のいる馬車へと戻った。



 馬車に戻った俺たちを待っていたのは耳を疑うような報告だった。


「皆さんに報告しなければならないことがあります」


 俺と騎士達がテスラ様の話に耳を傾ける。


「想定以上の戦闘によって、馬車の進行が遅れてしまっています」


 確かにそうかもしれない。俺が来てからだけど、一日に少なくても三回以上はモンスターと戦闘している。その度に馬車を止めて護衛しているため、全然進めていない。


「それにより、食料が足りなくなりました。到着まで五日以上かかるのに対して、食料はあと三日分しか残っていません」


 ここには六人の人間がいる。テスラ様、メイドさん、騎士達三人、そして俺。二日食べないで過ごすのは厳しいかもしれない。



「ということで、何か案はないか?」


 騎士達のまとめ役であるジルコさんが言った。夜、食料問題について話し合うことになったのだ。


「森で食べられそうなモンスターを狩って食べるってのはどうですか?」


 ガスターが提案する。


「悪くないがそれだとテスラ様の護衛が薄くなってしまう」


 なるほど、確かにモンスターを狩るとなると騎士か俺が森に入ることになる。そうなるとただでさえ少ないテスラ様の護衛が三人になってしまう。その間に別のモンスターの襲撃を受けたら守りきれなくなる可能性がある。


「俺達が交代でご飯を抜くって言うのはどうでしょうか?」


 俺の提案だ。


「恐らく不可能だろう。テスラ様は一人あたりの食料をギリギリまで減らして考えている。少ない食事を一回でも減らしてしまうと戦闘に影響が出るかもしれない」


 何か、案はないのだろうか? 


 ──スキル『食事不要』を獲得しました──


 俺は新しいスキルを獲得した。しかし、俺一人が食事不要になった所でまだ足りない。途中の街とかに買いに行ければ良かったのに。だが、途中に街はない。


 ──スキル『帰還』を獲得しました──


 『帰還』? 俺は気になって『鑑定』してみる。


 ──一度行ったことのある街に移動出来る──


「おっ!」

「どうした!?」


 突然、声を出した俺に不審な目が向けられる。けど、これで問題を解決できるはず。


「ジルコさん、俺が『帰還』のスキルを持ってるんでそれで食料を買いに行くのはどうでしょうか?」

「『帰還』だと!?」

「おい、トール! 『帰還』ってレアスキルだぞ」

「そ、そうなのか?」

「うむ、『帰還』を持っているものは『転移』を持っているものと同じくらい重宝される」


 あ、けど俺、コロナ王国しか行ったことない。絶賛指名手配中なの忘れてた。ならば『転移』だ。


 ──スキル『転移』を獲得しました──


 ゲットしちゃった。


「『帰還』と『転移』って何が違うんですか?」

「そうだな、『転移』はどこにでも行けるってことだな。それに比べて『帰還』は一度行った場所にしかいけない」

「あと、あれだぜ、『転移』は挟まったりする」

「なんだって?」


 ガスターが不穏なことを言った。挟まる? 何が? どこに?


「『転移』は好きな場所に飛べるぶん、転移先がズレることがあるらしい。それで建物に挟まったり、地面に埋まったりするらしい」

「それは、怖いですね」


 やっぱり『帰還』にしようか。そうしよう。この真っ黒な鎧を来てけば大丈夫な気がする。


「よし、お金を渡すから、行ってもらえないだろうか?」

「いつ行けばいいですか?」

「そうだな……」

「明日の朝早くはどうだろうか? 早朝ならばモンスターもあまり動かない」

「分かりました」

「なるべく直ぐに帰って来るように」


 こうして、食料問題は解決出来ることになった。他の騎士達の顔が明るくなる。しかし、俺はメルや岡本のことを思い出して、気分が悪くなった。


「大丈夫かトール?」

「あぁ、大丈夫だ」


 ガスターが心配そうに俺の顔を覗き込む。王国にいたテスラ様達はきっと、俺が指名手配されていることを知っている。俺は絶対にバレて仲間を失いたくないと思った。



スキル


『学習』、『翻訳』、『鑑定』、『心話』、

『追跡』、『気配感知』、『隠密』、

『体術』、『変装』、『武器生成』、

『原子操作』、『武器召喚』、

『防具召喚』、『聴力強化』、『第六感』、『剣術』、『索敵』、『魔術』、

『体力強化』、『魔力強化』、

『詠唱省略』、『高速思考』、『地図』、

『聖剣創造』


『食事不要』

 食事をとらなくてもよくなる。


『帰還』

 一度行ったことのある街に移動出来る。


『転移』

 好きな場所に移動出来る。

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