表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/21

9

 ミミズのような長い体に、ヤツメウナギのような口のついた化け物が、うねうねと体を動かす。それが気持ち悪いこと、気持ち悪いこと。


「一気にケリをつける! 『雷撃』!!」

「ギュルル?」


 雷は確かに俺の手のひらから放たれた。しかし、放たれた雷撃はミミズの化け物に当たる寸前、壁のようなものにあたりかき消された。


「なにっ?」

「多分、魔力障壁よ。誰かがこの化け物に魔法をかけているのよ」


 という事は、この化け物を操っている者がいるという事だ。念の為『索敵』を使ってみるが、それらしき人は見つけられなかった。


「なら、物理攻撃でやるしかないのか?」

「そうね」


 メルが剣を構えて、いつでも攻撃出来るような姿勢になる。俺も『剣術』を使って構える。


「ギュルルルル!!」


 ミミズの化け物が動いた。地面を蛇のように進み、大きな口を開けながら俺たちに近づいてくる。


「『紫電一閃』!」

「ハァッ!」


 俺はすれ違いざまにミミズの化け物に切りつける。その時に叫んだ技名は俺が考えたものじゃない。断じて違う。まぁ、カッコイイとは思うが。

 そして、反対側をメルが切りつける。


「ギュルっ、ギュルルルル!」

「やったか?」

「いや、まだだ」


 ミミズの化け物の傷がどんどん再生していく。魔法が聞かない、大き過ぎて致命傷を負わせられない、それに再生もする。どうやったら倒せるのだろうか?


「何かないのか……」


 俺は必死に頭を働かせる。


 ──スキル『高速思考』を獲得しました──


 スキルも発動し、ありえない速度で俺の頭が回転する。なにか、なにかないのか?

 『体術』、『剣術』、『魔術』のスキルを片っ端から見ていく。


「トール、危ないっ!」


 メルの声によって俺は、接近していたミミズの化け物に気がついた。慌てて回避行動をとる。


「うっ」

「大丈夫?」

「あぁ、問題ない」


 すぐに立ち上がり、ミミズの化け物を見据える。使える魔法は……。


「あった!」

「化け物を倒せるの?」

「わからない。けど、倒せなかったら終わりだ。これを使ったら、魔力が切れて俺は動けなくなる」

「なら、賭けね。失敗したら私もしんじゃうんだから。信じてるわ」

「任せとけ」


 俺は両手を天に掲げる。すると、『雷撃』とは比べ物にならないほど大きな魔法陣が出現した。


「な、なんなのこれ?」

「悪い、もう少し時間がかかりそうだ」

「私が時間を稼ぐわ」


 メルがミミズの化け物に突っ込んでいく。とても心配だが、魔法陣に集中しないといけないため、メルから目を離す。普通は詠唱も必要なんだから大変だ。『詠唱省略』を獲得していて心から良かったと思う。


「あと少しだ」


 魔法陣が完成していく。近くからはメルが戦う音が聞こえてくる。そして、魔法陣が完成した。


「メルっ、避けて!」

「────」


 メルがミミズの化け物から離れた瞬間、俺は魔法を発動する。


「『神鳴』」


 カミナリがミミズの化け物に落ちる。魔力障壁が俺の『神鳴』を食い止める。しかしそれも一瞬の事だった。魔力障壁が粉々に砕けて『神鳴』がミミズの化け物を焼く。


「ギュルルルルルルルルルルルルル!!!」

「はぁ、はぁ。これでどうだ」


 そして断末魔をあげた後、ミミズの化け物は跡形もなく消え去った。


「やったぞ」

「ほんとに終わりよね?」

「あぁ、『索敵』にもモンスターはうつってない」


 そうやって安堵した俺を疲れが襲う。


「おっと」


 その場に立っていられなくなり、俺は尻もちを着いた。


「魔力欠乏症ね。少し休憩しましょう」

「そうだな」


 俺の隣にメルが座る。風になびく金色の髪がとても綺麗だった。俺は隣に座るメルを眺めながら、少し休憩することにした。



 獣人などの大きな人も通れるように、大きめに造られた扉を押して、俺とメルはギルドの中に入った。ギルドの中にはクエスト終わりなのか、仲間たちと話していたり、ご飯を食べたり、お酒を飲んだりしている人がいた。そんな中、俺達はまっすぐ受け付けに向かう。


「依頼達成のサインを確認しました。お疲れ様です」

「ありがとうごさいます」


 達成のサインが入った依頼の紙を受け付けのお姉さんに渡して、報酬を受け取る。今回の報酬は銀貨一枚だ。これにプラスして、ゴブリンの魔石を売ったお金が入る。


「全部で銀貨三枚ね」

「これは多いのか?」

「そうね、魔石の状態が悪いから少し値段は落ちたけど、悪くない金額だと思うわ」

「なるほど」


 雷魔法を使うと、魔石の状態が悪くなるらしい。次からは気をつけよう。


「はい、これがあなたの取り分よ」


 そう言って、メルは銅貨五十枚を渡してくる。少なくない?


「えっと、これだけ?」

「ほんとは半分、半分だけど、トールは私に返さないといけないお金があるでしょ?」


 なるほどそういう事か。どうやら残りは借金の返済に当てられるらしい。メルは利子を取らないと言っているが、早く返してあげたい。


「今日の残りは自由時間よ。私は用事があるから行けないけど、街をフラフラしてみたらいいんじゃないかしら?」

「たしかにそうだな。どこに何があるかもわからないし」


 メルと街を回れないのは残念だが、俺は街を巡ることにした。



 ギルドの前でメルと別れてから、数分がたった。ギルドの前の綺麗な街並みから一転、俺の周りの建物はボロボロで屋根がなかったりしていた。ここはスラム街らしい。甘いものを探しているとこんな所に出た。


「迷っちゃったな」


 ──スキル『地図』を獲得しました──


 またしても、俺に必要なスキルを手に入れた。『地図』を見てみると、ここは王城から東北の位置にあるらしいことが分かった。


「けど、せっかく来たんだし見て行くか」


 そう思い、俺はスラム街を進んでいく。その事を後悔するのに、そんなに時間はかからなかった。


「トール・ミナミだな? 一緒に来てもらおうか」

「は?」


 気づくと俺は周りを囲まれていた。なんでバレた。髪の毛は金色にしているし、目立つようなこともしていない。それなのに何故?

 そんな疑問が俺の頭の中をグルグルと回転する。


「お、おい。嘘だろ?」


 混乱する俺の目の前に、城にいた騎士と同じ純白の鎧に身を包んだ岡本が現れた。


「なんで、岡本がいるんだよ……」


 俺はそう呟いた。



スキル


『学習』、『翻訳』、『鑑定』、『心話』、

『追跡』、『気配感知』、『隠密』、

『体術』、『変装』、『武器生成』、

『原子操作』、『武器召喚』、

『防具召喚』、『聴力強化』、『第六感』、『剣術』、『索敵』、『魔術』、

『体力強化』、『魔力強化』、

『詠唱省略』


『高速思考』

 頭の回転をはやくする。


『地図』

 一度通った道を記憶する事が出来る。ダンジョンでも。


 誤字直しました。

 誤字報告ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ