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 俺の前には、信じられない光景が広がっていた。


 見たこともないような、宝石に飾られた室内。


 その部屋の中にいる、純白の鎧に身を包んだ騎士。


 そして、俺達の下に描かれた魔法陣。


 俺は異世界に召喚されたのだと、理解するのにそう長い時間はかからなかった。


「ဒါဟာအောင်မြင်မှု」

「ဒါဟာအောငျမွငျခဲ့!」


 魔術師なのか、ローブを纏った男性が何かを叫んだ。だけど、俺にはなんて言っているのか分からなかった。これが異世界の言葉なのか?

 周りを見てみると、他のクラスメイト達は魔術師達が何を言っているのか分かっているようだった。俺だけが言葉を理解していない。なんで他のやつは異世界の言葉が分かるんだ?


 ──スキル『翻訳』を獲得しました──


 そう思っていると、突然脳内に人の声が流れた。


「王女様、異世界人の召喚に成功しました」

「よくやってくれました。あなた達はゆっくり休んでいてください。あとは私が説明します」

「かしこまりました」


 そして、何故か異世界の言葉を理解できるようになった。

 確かスキル『翻訳』を獲得したって言ってたな。なるほど、スキルを獲得したから異世界の言葉が分かるようになったのか。スキルの存在を知った俺は、王女様の説明を聞くべく集中した。


「異世界人の皆様、ようこそコロナ王国へ」


 王女様の言葉に、みんなが反応する。


「コロナ王国?」

「これ、誘拐じゃないか?」

「おいっ、俺達を元の場所に戻せ!」

「そうだ、そうだ」


 状況を理解したクラスメイト達が、一斉に抗議し始めた。主にクラスの男子だ。


「口を慎め!」


 しかし、純白の鎧に身を包んだ騎士の一喝により黙らされる。


「いえ、良いのです。突然呼び出したのは私たちです。皆様も混乱されているのでしょう」


 騎士に王女様が言った。


「皆様、突然の召喚お詫び申し上げます。私の名前はヒステリシス。ここ、コロナ王国の王女です」

「王女様?」

「確かにかわいい」


 かわいいは王女と関係ないと思うが、俺もかわいいと思った。金色の髪に現実離れした美貌。まるで人形のような可愛らしさだ。


「皆様には、この国の危機を救ってもらうため召喚させていただきました」

「召喚、危機?」

「俺達が救う? 何を?」


 やはり、あまりの事態に混乱しているのかクラスの半数はピントきていないようだ。


「王女様。いったい僕達は何をすればいいんでしょうか?」


 クラス委員長の岡本が、発言した。流石、委員長こんな時も頼りになる。


「それは、魔王からこの国を守って欲しいのです」

「魔王?」


 テンプレだな。魔王を倒すために異世界転生、チートスキルでバッタバッタと敵を倒す。


「分かりました。その、魔王を倒せば元の世界に戻れるんですね?」

「はい、そうなります。魔王を倒すための準備はこちらでやらせてもらいます。なので今日は部屋を用意しましたので、そちらでお休みください」

「ありがとうございます」


 そんなこんなで俺達は部屋に案内された。

 なるほど、これが異世界転生か。



 用意された部屋はとても豪華だった。大きな部屋にふかふかのベット。これが一人、一部屋あたる。これから魔王と戦う異世界人にとても優しい。


「ふかふかでふわふわだ」


 こんな感じで、転がったり跳ねたりして高級ベットを楽しんでいると、


 ──コンコン


 と、ドアがノックされた。


「どうぞ」

「失礼します」


 奇行をやめ返事をすると、メイドさんが部屋に入ってきた。

 生メイドさんだ。初めて見た。そりゃそうか。現実で本物のメイドさんを見ることなんてまず無い。


「夕食が出来上がりましたので、報告に参りました」

「どうもありがとうございます」

「では、こちらへ」


 どうやらみんなで食べるらしい。

 メイドさんに案内されて俺は食堂へ向かった。



 食堂の長いテーブルにはズラリと豪華な食事が並べられていた。俺は適当に場所に座り、どれから食べようかと料理をみる。

 他のクラスメイト達も各々席につき、食べ始めた。しかし、その顔はみんな暗い。

 俺は気にせず肉、パン、スープとどんどん完食して行く。

 そして、みんなの食事が終わりかけた時だ。


「みんな聞いてくれ」


 食堂の真ん中らへんに座っていた、岡本が立ち上がり言った。


「突然、異世界に召喚されて、みんなもまだ混乱していると思う。だけど、みんなで力を合わせればきっと魔王を倒せる」


 だから、と岡本が続ける。


「さっさと魔王を倒して、元の世界にみんなで戻ろう!」

「「「おぉぉぉぉぉぉ!!!」」」


 岡本の言葉に励まされた、クラスメイト達が声を上げる。

 さっきまでの暗い顔が少し明るくなったように見える。


「ところで、明日から何すればいいんだ?」


 そんな中誰かから、疑問の声がが上がった。確かに気になる。いきなり魔王と戦って来いとはならないだろうけど。ならないよね?


「王女様の話だと、明日は鑑定を行うらしい」

「鑑定?」

「なんだそれ」

「えっと、一人一人が持っているスキルを見るらしいよ」

「おぉ、スキルかぁ」

「ほんとに異世界に来たんだな、俺達」


 クラスの男子達はスキルと聞いて目を輝かせる。ほんとに単純だ。まぁ、俺もその一人なんだけど。チートスキルで無双ハーレムだ。


「異世界人はみんな強いスキルを持ってるらしいから、期待できるね」

「俺、めっちゃ強かったりして」

「いや、俺の方が強いね」

「なんだとぉ」

「やるのか?」


 男子達が騒ぎ出す。

 こんな感じでクラスのムードメーカー達も一役かって、解散する頃には女子達も明るい顔をしていた。



 俺は寝る前にお風呂に入らせてもらった。これまた豪華な風呂だった。俺の家の何十倍だろう、この広さ。


「こんな広いお風呂で一人だと、泳ぎたくなるな」

「それはやめて欲しいな」


 独り言に返事があった。湯気で見えにくかったが、岡本がいた。頭にタオルを乗せて肩までお湯に浸かっていた。


「いたのか」

「ごめんね、邪魔しちゃって」


 俺は岡本の隣に入る。近くで見るとほんとにイケメンだ。発言と言い顔といいイケメンすぎる。


「どうして、岡本は落ち着いていられるんだ?」

「うーん。そうだな、異世界に転生する妄想してたからかな?」

「岡本が?」

「みんなにはナイショにしてくれよ」


 驚いた。まさか岡本がそんな妄想をしているとは。


「岡本もそんな妄想するんだな」

「もちろんさ、ラノベだって結構読むしね」

「なんか岡本の、イメージ変わったわ」

「そうかい?」

「あぁ」


 しばらくの間、俺と岡本でラノベのことを話したり、アニメのことを話したりした。


「それじゃ、僕はお先に失礼するよ」

「おう、また明日な」

「おやすみ」

「おやすみ」


 岡本と別れて、一人でお風呂を堪能したあと俺は部屋に戻った。その間、俺は決して泳いだりしていない。



スキル


『翻訳』

 どんな言葉も聞くことができ、話すことができ、読むことができ、書くことができる。

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