【24話】誤魔化し成功?
謎の獣人美少女に正体を見破られかけ、呆然自失とするも会話は途切れない。
「……本来この情報には危険が伴いますし、他者に伝えるべきではないのですが、あなたは私の不手際のせいであの者達に狙われました。故に、私にも説明責任があると判断します。幸いあの尋常ではない太刀筋や、隠形を見破る能力。武芸者としての腕は間違いなく超一流ですので、下っ端共にどうこうされるとは思いませんが……」
「あ、あぁうん! そうだねっ! 下っ端はしょせん下っ端だよねっ! あは、あははははっ!」
よぉし!
そうだ、そのまま勘違いしていてくれっ!
俺は被害にあった一般人Aだ、それ以外の何者でもない。
だがもし真相に辿り着くような事があれば、……消すか?
いやまて、冷静になれ。
それはあくまでも最終手段だ、逃げるっていう手だってあるだろう。
「しかし困りましたね。なぜあの者達があなたを狙ったのかは謎のままですし、口も割らないまま、歯に仕込んでいた毒を飲みこみ死んでしまいました。それに本当はこっそりあなたを監視するつもりだったのに、私の隠形も見破られて説明するはめにもなりましたし……。もう、気配を隠すのには自信があったんですよ?」
「へ、へー。それはタイヘンだー」
「ええ、大変です。何の収穫もなかった訳でもないので、私の面目が丸つぶれという訳でもありませんけど。でも、どう考えてもあなたはイレギュラーです、……怪しいですっ!」
アヤシクナイヨー。
人畜無害ノ魔族ナンダヨー。
しかし、なぜ奴らは俺を魔族だと見破る事が出来たのだろうか。
この原因を把握しない事には放っておく事もできないし、これからも俺に接触してくるなら組織の拠点ごと潰さなくてはいけないかもしれない。
もうホント、超迷惑だ。
アザミさんは怪しいと言いつつも魔族だとは認識していないので、安全なんだろうけどね。
とりあえず魔族崇拝者とかいう迷惑組織の事はあとで突き止めるとして、ここは話を変えておこう。
あんまりこの話しを掘り下げて正体がバレたら元も子もない。
「あー、うんっ! それはそうと、アザミさんも冒険者だったんだね。実は俺も仲間と一緒にギルドに登録しようと思ってるんだ。その時は先輩冒険者として宜しく頼むよ、俺はルーケイドって言うんだ」
「……ふふっ、ルーケイドさんですね。でも、その実力でまだギルドに登録してないって、そんなの嘘ですよね? ギルドに年齢制限はないですし、例え他国から流れてきた人だとしても、冒険者ギルドは人間大陸共通ですよ」
「えっ」
「えっ?」
しまった、世界共通の組織だったのか、そこまで情報を探ってなかった。
やばいぞ、こんな事も知らないってなると、ますます疑われてしまう。
ごまかせ、誤魔化すんだルーケイド。
「いや、俺達は別の国の田舎から出て来たばかりなんだよ。冒険者の街として活気のあるこのレビエーラで、一旗揚げようって思ってた訳」
「ああ、なるほど。そういう事情だったんですね」
「そうそう、そういう事情」
なんとか誤魔化せたかもしれない。
「……なーんて、それも嘘ですよね?」
「は?」
「隠しても無駄ですよ。どこの田舎村にそんな上等の剣や皮鎧を購入できるだけの資金があり、かつ武術を納めるだけの教養があると言うんですか。たぶんルーケイドさんはどこかの国の大貴族のご子息様か、それに匹敵するだけの功績を持った武芸者の子息様ですよね? バレバレですよ」
そういってパチリとウインクするアザミさん。
この装備はヴラー村でそろえたから、嘘じゃないんだけどね。
でも父さんの功績を考えると、そこらへんに関しては遠からずもなんとやらだ。
地味に推測が掠っている所が恐ろしい。
「…………」
「ふふーん、完全論破っていう奴ですね。でも、いいです。事情があるんでしょうし、今はそういう事にしてあげましょう。明日から宜しくお願いしますね、良い匂いのする村人さん? いずれこの聖剣の力を見せてあげますとも」
聖剣っ!?
あの青く光る大剣、聖なる武器なの!?
魔族に特攻とかついちゃう系ですか?
怖、この子何者だよ。
しかしアザミさんはそれだけ言い残すと、ぴょんぴょんと民家の屋根に上り、そのまま走り去って行ってしまった。
大剣を背負っていながら随分と身軽なようだ、流石獣人。
あと良い匂いってなんだろう。
まさか俺の居場所が割れたのも匂いを辿ってきたとかそういう感じなのかな。
確かに調査とかにはもってこいの能力だ。
それと見た感じ、前衛としての力量は俺やディーが欠伸しながらでも倒せる程度だけど、それでも武器の性能は要注意だ。
さすがに普通の冒険者が皆あのレベルの装備だとは考えにくいけど、それでも俺達の脅威となる存在が勇者以外にも居ると言う事を、肝に銘じておかなければならないだろう。
これは朝起きたら作戦会議だな。
魔族崇拝者とかいう奴らの事も含めて、対策を練っておかなければならないだろう。
まったく、初日から面倒なことばかりだ。