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【21話】人間大陸に到着


 成人式の翌日、俺達三人は父さんに連れられ港町オリュンに到着していた。

もう成人したから自分達で向かうと言ったのだが、父さん曰く「これくらいさせろ」だそうで、結局あの爆走馬車に乗っかり今に至るという訳である。


 でも流石にもう馬車は慣れたよ。


「にしてもディー、顔がボコボコだな」

「うるせぇ」

「ディーが見るも無残な顔になってるけどー、まあ、いつもと大して変わらないわねー」

「……泣くぞこら」


 どうやらディーも親子喧嘩をしたらしい。

武器を使った怪我では無いようだから、恐らく素手での殴り合いだろう。

この筋肉馬鹿の相手をするのも大変だっただろうに、ディーの親父さんも頑張ったな。


「それではアマイモン様、こちらが擬装用の魔道具になります。この魔道具は脳内の魔石に反応して魔族の特徴を弄る物なので、種族によって偽装の内容が変わります。それぞれの専用の物だと認識してください、他の種族用に調整された魔道具は自身に効果がありませんので」


 説明してくれるのは、向こうの大陸と頻繁に行き来する連絡船の船長さん。

船長さんも船員さんも魔族で構成されている。

人間とのやり取りを行うにあたって、魔族だとバレて良い時とバレちゃいけない時があるため、こうして擬装用の魔道具を常備しているのだ。


 今回渡された形状は腕輪型だが、他にも色々なタイプがあるらしい。


 そして魔石。

魔石は魔族や魔物だけに存在する第二の心臓とも言える力の結晶で、これが壊れると命の危険に直結する。

ちなみに、この魔石はヒトや獣人、森妖精エルフ土妖精ドワーフには存在しない。

魔族とそれ以外、魔物と動物を分ける明確な差にもなっているようだ。


「これ、腕輪を嵌めるだけでいいのかな?」

「はい、魔力を通さずとも大丈夫です。近くにあれば、自動的に魔石を感知しますので」

「へぇ」


 とりあえず着けてみる。

……特に変わった感じはしないが、どうなんだろう。


「なんか変わった? ……っておい、ディーが真っ白になってるぞ!?」

「わー、茶色いボコボコ顔が白いボコボコ顔になってるー」

「そろそろボコボコから離れろっ! って本当に真っ白になってる!? スゲー!!」


 褐色だった闇妖精ダークエルフの肌が、森妖精エルフのような真っ白な肌へと変貌していた。

なるほど、これが種族特性の見た目を弄るって事か。


 となるとサーニャは……。


「うん、普通の美少女だね」

「えへへー、ちょっと嬉しいかなー」

「おい、なんか俺と扱い違い過ぎないか? なあ、なんでだよ、なぁ」

「泣くなよディー。女の子相手に見苦しいぞ」


 レイス族の特徴で青白かったサーニャの顔に赤みが増し、まさに深窓の令嬢といった感じの美少女になっていた。

どこからどう見てもヒト族にしか見えない。


 という事は、俺は吸血鬼ヴァンパイア族の特徴である真紅の目が別の色になってるのかな?

何色になったんだろう。

剣に自分の顔を反射させて覗いてみる。


「あら、目が真っ黒」


 懐かしきかな、前世の色である黒色の瞳になっていた。

確かに、これなら俺もヒト族以外の何物にも見えないだろうけど。


「よし、全員上手く行ったようだな。……それではルーケイド、私はここでお別れだ。二人も息子の事を頼んだぞ、支えてやってくれ」

「……へへっ、任せろよ親父さん。親友の面倒は俺がみてやりますって」

「ルーくんの事は任せてくださいー。あと、たぶん面倒を見れられちゃうはディーの方だと思うのよー」

「そんな事ねぇよ!」


 実際ディーには旅支度や村人への根回しとかで世話になっているし、今までの事も含めて親友として最高の信頼を置いているけどね。

それはもちろんサーニャもだけど。


「はっはっはっは!! 大丈夫だ、二人の事は信頼しているとも。息子のためにここまでしてくれた君たちを、どうして疑う事ができようか」


 そういって父さんは俺達三人の頭を順番に撫で、頷いた。


「……それじゃあ父さん、行ってきます」

「うむ。行ってこい」



──☆☆☆──



 父さんと別れてから数週間後、港町オリュンを出立した俺達は、他大陸の港町レビエーラへと辿り着いていた。

船員さんから聞いた話によると、ここはガイオン王国っていう大国で、港町レビエーラは冒険者で栄える大きな街の一つらしい。


「う、うぉぉ。……オリュンも凄いと思ってたけど、レビエーラもまた凄いな。建造物もそうだけど、これだけ活気のある街は初めてだ」

「はっはっは! 坊ちゃんはレビエーラは初めてですかい。だけど気ぃつけて下せぇ、こちらの住人にとってオリュンってのは地獄への片道切符。向こうに降りたら、魔族の街にいたなんて事を口が裂けても言わねぇ事をおすすめしやすぜ」

「あ、そうだった。すみません船員さん」


 あまりの街の活気に感動して、ついつい口を滑らせてしまった。

船旅の途中で仲良くなった船員さんのフォローがなきゃ、着いた瞬間大変な事になっていたかもしれない。

気をつけないと。


 ただまあ、それはそれとして新天地に来たわけだし、精いっぱい満喫させてもらうとしよう。

人間大陸、楽しみだ!



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