表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/101

【9話】3歳のおわりに

本日ラストです。


 罠が初成果を挙げた夜、今回の奇怪な行動の件について、両親から尋問を受けていた。

どこから陶器を持ってきたのだとか、どうして魚が引っかかるのかとか色々聞かれたが、一番聞かれたのは「どこでその知識を手に入れたか」である。


 当然の疑問だ、俺が親でもコイツちょっと普通じゃないと思うだろう。

いや、俺や兄さんに溢れんばかりの愛を注いでくれている両親が、自分の子供を化け物の子のように見る事はありえないんだけどね。

これはそういう目ではない。


 子供達に教えている、どこで知ったのか分からないような高度な算数──この場合はまだ小学校レベルを抜け出していないが、それでも村の文明レベルでは一流の学問──の事もあるし、どこかで俺に入れ知恵をしたりして、接触している奴がいるんじゃないかとか、危険な事をしているんじゃないかとか、そういう目だ。

どうやら心配をかけさせてしまったらしい。


「……ではルーケイド、本当に誰かから教えてもらった方法じゃないんだな?」

「はい父さん。どこかで聞きかじったか、本で読んだ知識を工夫したにすぎません」


 聞きかじった内容や本で読んだ内容に関して、これらはたまにヴラー村に来る行商の皆さんが俺に力を貸してくれている訳だが、それについては父も既に知っている事だ。

特に危ない事もないし、本に関しては四天王である父さんの七光りパワーで、チラ見くらいなら何を言われる事もなく読ませてもらっている。

恐らく、3歳の子供が本を読める訳がないとでも思っているんだろう。


 話を戻すが、まさか前世の知識ですと言う訳にもいかないので、ここらへんが落としどころだろう。

それに全くの嘘でもない。

前世での知識すら、どこかで本当に聞きかじった程度なんだから。


「わかった、では何も言うまい。……それにしても見事な物だな。時間がかかるとはいえ、こうも簡単に魚が獲れるとは。これを上流から下流にかけて複数配置し、定期的に回収するだけで随分と村の蓄えに余裕が出る。それも安全にだ」

「……本当ね。それに3歳の子供が発明したなんて、こんな事を誰に言ったって信じてくれないわよ。逆にこちらの正気が疑われるわね」

「ああ、ルーケイドが目をつけられる事はありえない。今回の事が広まっても、運が良かっただけだと周りの者は思うだろう」


 会話から察するに、どうやら俺が善からぬ所から目をつけられるのを心配していたらしい。

こんな小さな村のどこに狙う理由があるのかは分からないが、まあ出る杭は打たれるっていうしね。

目立ち過ぎたら悪い大人たちから目をつけられたりもするんだろう。

まあ頭が正気なら、ヴラー村の過剰戦力といってもいい、我らがウルベルト父さんに喧嘩売るような奴がいるとは思えないけどね。


 ちなみに蓄えに関してだけど、畑や家畜などの資源の他に、父さんや兄さんや従士達が森で狩りをしてきたのを分配する事でこの村はまわっている。

既に10歳である兄さんは、父さんから引き継いだチート種族の恩恵もあり、近くに現れるゴブリンなどの些細な魔物程度では全く後れをとらないし、いい経験になっているらしい。


 父曰く、今の兄さんならゴブリン程度の矢くらい【身体強化】で弾き返せるスペックを有しているようなので、安心して連れていけるそうだ。

やっぱ異世界の筋肉すごいわ、マジモンの鋼の肉体だよ。


 俺も訓練がはじまってしばらくしたら、同じく訓練目的で森へと連れいかれるようなので、その時までに魔法の練度を高めておかないといけない。

5歳になってからはうちで子供達の希望者を募り、剣術や魔術の訓練を開始するそうなので、ディー君やサーニャちゃんも参加するんじゃないかなと思っている。


 ディー君は何やら超闇妖精スーパーダークエルフとかいう、俺が調子にのって教えた伝説の超人にあこがれているみたいだしね。

日本の童話やアニメを色々まぜたこの超人は、基本にして奥儀である【身体強化】を極めた超戦士で、属性魔法は使えないものの強化の魔力を具現化し、その力を撃ち出し敵を薙ぎ払う超エルフ砲を使えるとかいう、トンデモ設定の英雄だ。


 まさに黒歴史まっしぐらな訳だが、どうも彼の琴線に大いに触れてしまったらしく、いまさら取り返しがつかないレベルで妄信している。

もはや宗教といってもいい、超闇妖精スーパーダークエルフ教だ。

ぶっちゃけると、闇妖精ダークエルフは身体能力が高い代わりに魔力を外部に放出するのが苦手な種族なのだが、やれる所まで頑張って欲しい。

オレはオウエンシテルヨ。


 決して考える事を放棄した訳ではない。


 まあ、こんな事もあったりなかったりで、食料問題も徐々に改善しつつ、訓練も地道に続けつつで、俺の3歳は過ぎていった。

時々ディー君が必殺技のアドバイスを聞いて来たり、サーニャちゃんのマーキングが苛烈になってきたりもしたが、とても順調と言えるだろう。


 俺の今生での目標は特になく、強いて言うなら楽しんで生きる事が目標なわけだが、これはこれでいい生活なのではなかろうか。

ただ一つ気になるのが、以前父さんが撃退したという日本人と思わしき人物、ソウ・サガワの事についてだ。


 彼がどのような経緯でこちらに来たのかは知らないが、俺はいつか彼を一度目にしたいと思っている。

これが故郷に関しての未練なのか、はたまた別の何かなのかは分からないが、何かとても引っかかるのだ。


 だからこのリューズ王国での成人である、13歳になったら他大陸に渡ろうと思う。

撃退しただけで命までは取る事ができなかったらしいので、彼はまだ生きているはずだからね。



お読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ