変貌 5
腰に手を当て、スミスは髪をかき上げる。
しかしその顔つきは、状況を読み取ろうと必死に見えた。
モンゼンは未だにわかっていないが、スミスはワールドライトとして有名なソードラットを知っている。
そのソードラットが今崩れるように血溜りに倒れ、モンゼンもまた身動きが取れない。
更に、ソードラットの傍でうずくまる異形の男。
状況が理解しきれていないのだろう。
「助かったぜ、ビヨンに略奪者がいてな」
モンゼンは簡潔に状況を伝えてやる。
「今僕が腕を斬り落としたのが、そうだね? よかったよ、間に合って。それに、鉱物が沢山ある町で」
ある程度状況が飲み込めたのか、スミスが頷いた。
「ピピピル! ピル!」
スミスの腰の辺りから、金属にぶつかる音とピピルの鳴き声がする。
「ああ、この子突然暴れだしてね。かわいそうだが、檻に入れたんだ」
そういって指差す先には、即席でこしらえた鳥かごがくくりつけられていた。
「ピピルー。ピルルルー」
ピピルは籠からモンゼンを心配そうに見ている。
しかし、モンゼンは何も言葉をかけない。
まだ戦いは終わっていなかった。
「いてて……どうしてくれるんだよ、おれの手」
スミスの後ろで、肘から先をなくしたブッチが立ち上がっていた。
「ああ、ごめん忘れてたよ。略奪者って嫌いなんだ、品がないじゃないか」
まるで脅威ではない、とばかりに余裕を持ってスミスがブッチの方を向く。
「でさ、僕の友達をこんなにしたのは、君かい?」
「ああ、モンゼンさんの友達なのか。そりゃうまそうだぜ、食うところ、あんまりねえけどよ」
もはやブッチの戦力は半減しているだろう。
しかし、彼は略奪者としての本能に忠実だった。
「でもポリポリやるには、ちょうど良さそうだよなあ!」
重い掌を振り回していた腕力は、全く衰えを見せない。
先端を失った腕を地面に叩きつけると、その勢いでスミスに向かって飛んで来る。
しかし食事を欲するその口は、求めるものに届く事はなかった。
「悪いけど、近寄らないでくれるかな」
動じた様子もなく、スミスが告げる。
「お、おい。どうやったんだよこれすげえな。いてえ。いてええええ」
驚きながら痛がるブッチの四肢は、地面から伸びた杭で貫かれていた。
「よかったよほんと、これだけ金属があれば僕、無敵」
悲鳴を上げるブッチをよそに、スミスが気取る。
しかし、すぐその表情が引き締められた。
「ねえモンゼン君。この人、知り合いなの?」
「ああ、そうだ。おれは会ったばっかだけど、ソードラットのな」
質問に答える顔が、自然と歪む。
「そうなんだ。様子おかしかったから動きとめるだけにしたけど、よかったかな」
すぐ止めはさせるけど、と言わんばかりの様子だ。
だが、そうもいかないだろう。
「ソードラットも別れくらいは言いてえだろう。動けないようにしといてくれるか」
「はいはい。で、キミのその足、治らないよね。どうする?」
「あー……。はぁ。しょうがねえだろ。やってくれ」
「痛くなく、は無理だから諦めてよね」
やがて来る、胸の痛み。
モンゼンはそこで、意識を失った。




