変貌 2
ブッチは赤く染まった手を、頭上に掲げる。
「いくら食っても足りなくてよぉ。強くなるって、結構大変なんだな」
何か、来る
ソードラットへ向かって言葉を発するブッチを見て、モンゼンは構える。
「ジョズもなかなかうまかったけど、お前らはどんな味がする……、んだろうなっ!」
言葉と同時に、ブッチがその発達した両手を地面に叩きつけた。
まるで巨大な生物の足踏みのような、衝撃。
轟音と共に、大地が揺れる。
家々は火事で傷んだものから、石造りの壁が崩壊していく。
そして立ち上る、土煙。
震動と土煙が収まると、ブッチの姿は目の前から消えていた。
ソードラットは変わらず毛を逆立てたまま、あたりを見回している。
どうやらモンゼン同様、ブッチを見失っているようだ。
攻撃を警戒してか、地面から離れるように身軽な動きで屋根の上へ移動する。
どちらに来る。
モンゼンは感覚を研ぎ澄ませ、異変を待った。
やがて来る、微細な震動。
……まずはおれか。
モンゼンは地中から迫り来る脅威を察知し、その拳を地面に振るう。
拳を打ち付けられた場所を中心に、地面が砕けた。
円形に陥没したような地形の奥からは、ブッチがちょうど顔を覗かせている。
「っとと、まだ表にゃ出ねえはずなんだけどな。モンゼンさん、あんたかい」
「そうだ」
拳を構えたまま、答える。
「もうやめねえか」
願いを込めて、言った。
「無駄だ! 略奪者はもどらねえ!」
ソードラットの怒声が、頭上から降ってきた。
ブッチは自分が掘った穴から這い出ると体についた土を払い、ただ笑う。
「頼む、もうやめようぜ」
もう一度、言う。
頼むから戻ってくれ。願いを込めて。
「モンゼンさんさ」
ブッチが突然、どかりと座り込んだ。
両手をだらりと前に投げ出して、語りかけてくる。
「あんた、強いんだってな。なんとなくわかってたし、やっぱ強そうだ」
顔を上げるブッチ。敵意はないように見えた。
「だろ、もうやめとけよ」
話が通じそうだ。モンゼンは表情を緩める。
ブッチはにこやかに、言った。
「羨ましいよ。おれはそういう強さが欲しかった。ソードラットと、肩並べてみたかったんだよな。だからさ」
「避けろ!」
ブッチが両手で引っぺがした岩盤と、ソードラットの声が同時に飛んで来る。
「せっかく手に入れた強さ、捨てれるかってんだよな」
岩盤越しにブッチの声が聞こえた。
「そうか。もう、言わねえぞ」
身に迫っていた岩盤を砕いたモンゼンは、再び拳を構える。




