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ビヨンの町 2

 目の前の男に、正直なところモンゼンは閉口していた。

錫杖を渡すのは、話を聞いた後にするべきだったようだ。

新しいおもちゃを手に入れたガインは、杖を眺めてはにやけ、持ち上げては微笑み、撫でては感嘆の声を上げている。

先ほどからモンゼンが何を聞いても「うむ」だとか「ああ」だとか、生返事ばかりを繰り返しているのだ。


「おい、頼むから教えてくれよ。その杖、壊しちまうぞ」

ピクリ。ガインがモンゼンの言葉に動きを止める。

「何が聞きてえんだったか」

杖を背に回しながら、ガインはやっとモンゼンをみた。

お目当てのものを手に入れたからか、先ほどまでモンゼンとしていた会話は何も覚えていないようである。


「スミスがどこいるのか、教えてくれねえか」

「ギーファの中ごろ、こっから更に東にいった先にセムの肌って場所があんだよ。あの辺りはえらい堅え石ばかりで、畑も作れなきゃ草木も生えねえとこだ。そこで鍛冶やってるって話だぜ。窯炊くのも一苦労だろうになあ」

「セムの肌、か。あんまり地名っぽくねえな」

「人なんか住まねえとこだからな、勝手に呼んでんだよ。セムってのは、どれだけ鍛冶場に立っても鍛冶焼けもしなかった昔の鍛冶屋の名前だと」

義務は果たした、とばかりにガインは再び杖を手にする。

既に自分の世界に入り込んでいる。どうやら、もう話は出来そうにない。

モンゼンはガインに背を向け、ソードラットが去ったほうへ歩き出した。



 目当ての協会支部は、すぐに見つかった。

アンプの支部と同様に、建物の前には手のひらの看板が出ていたからだ。

無骨に石を積み上げたような箱型の建物が、それである。


 どうやら、ここでは食事は出来ないらしい。

手のひらの看板の隣に、石がいくつか並ぶ絵が描かれた看板が垂れ下がっているだけだ。

中に入ると、埃の粉っぽい匂いが充満していた。

外のマークは、仕入れた鉱物の取り扱いをしていることを表しているのかもしれない。


 見回すように歩いていたモンゼンは、奥のカウンターにいる招き腕の男に訊ねる。

「ソードラット、来てねえかな」

受付の男はいぶかしげにモンゼンを見ながら

「今、支部長と話してる。その辺りで座って待ってろ」

とぶっきらぼうに返すばかり。


「なんだよ、中に入れてくれよ」

「しらねえ奴を支部長とソードラットさんに会わせられるかよ」

取り付く島もない。

モンゼンは自分の胸元あたりにある男の頭を憎憎しげに見ながら、言う。

「いいから入れろよ、ちび」

「招き腕はみんなこんなもんだろうが。てめえ表でろ!」

カウンター越しに、受付の男はたくましい左腕でモンゼンの胸元を掴んだ。


「あんた、何してんですか」

一触即発のタイミングで声をかけたのは、報告を終えたソードラットだった。






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