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打ち明けるもの 2

 ロベルの告白を聞き、ハイルマンが言う。

「おい、いいのか」

「仕方ないでしょう、知り合いが迷惑をかけるのに都合よく黙っているわけにもいかない。その代わり、この部屋内で留めてもらえると助かる」

前半はハイルマンを、後半は他の五名を見渡しながら、ロベルは言う。



 驚きにざわめく、会議室。

静まるのを待って、ロベルが語り出す。

「おれ達ヴィジターは、ある事情でこの島に来る。絶命の海を切り抜けられるだけの力を持ってな。あいつは来たばかりでな、ハイルマン殿に会った頃のおれと変わらない世間知らずだ。どうか、見逃してやってもらえないか。頼む」

それを聞いて、ハイルマンは懐かしそうに笑い、言う。

「戦に現れる切り裂き人、だったな。みんな、どうだ」


 呆気に取られていたヤイズが、問う。

「その、事情というのは」

「欲しいものが、ある。だから、戦い続ける」

答えるロベルに、頷いて黙るヤイズ。


隣の大口が口を開く。

「ふん。お前と同じ力量だからあの黒ずくめを見逃せ、と言われた時は団長の正気を疑ったが、それでか。お前と同じような力を持ってるなら、まあ勝てる気はせんわなあ。わかった」

「おれは、ワルダー殿に易々と勝てるとは思ってないです。ただ、あいつとは相性が悪いでしょう」

今度はワルダーを見て、ロベルが言う。


「聞いた話じゃ、ワルダーさんに噛まれてもけろっとしていたらしいですね、その男。僕も痛がらない敵の相手はちょっとしたくないです」

「お前のお仕置きは効果があるぞ」

ワルダーから隣へ視線をずらし、ロベルが少し口元を緩める。


「一つ、聞きたいんだがいいか」

「なんだ」

隣に座る、ジャックを見るロベル。

視線の先には、瞳孔を広げた釣り上がった目があった。


「お前の知り合いに、略奪者を作れるようなやつはいるか」

「知り合いにはいない。性質上、ヴィジターにそんな奴はいないと思う」

「そうか。実は南でおっさんの腹から出てきた指、調査に送ってた部下の一人のもんでな。違うなら、いい」

広がった瞳孔を狭めながら、ジャックが言う。


 全員が納得したのを見届け、ハイルマンが口を開いた。

「ロベル」

ロベルがハイルマンを見る。


「素性がどうであれ、お前の働きと強さ、優しさは皆が知ってる。早めに外から来たことを言えと、私は何度も言ったぞ。見てみろ。突飛もない話だろうが、皆信じてくれている。ここはそういう場所だ。忘れるな、我々は全員で王都騎士団だ」

視線の先には、武人ではなく父親のような顔をしたハイルマンがいた。

「はい。ありがとうございます」

短く刈った頭は、自然と同室の者達に下がっていく。


「いやあ珍しいものが見れたわい。戦士が頭を下げる姿、絵描きでも呼んで残しておきたいくらいだ」

ワルダーが場の空気を変えるように、微笑みながら言う。


「おいおっさん、戦士様が怒ってもしらねえぞ」

「本当ですね、僕は何も言っていませんよ、ロベルさん」

冗談に乗りおどけてみせる、ジャックとノーマン。


「所でなんですが」

ヤイズが思い出したように、ハイルマンを見て言う。

「ヴィジターのことは黙っておくとして、その他の略奪者に関する報告はどうしましょう」

ハイルマンは席を立ち上がり、ヤイズに背を向けて、答える。


「頼んだ」

ハイルマンが去り、扉の閉じた会議室。

残された室内では、五人の男の哀れむような視線が、一人の人物に注がれていた。

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