解明 3
目の前に立つモンゼンを、ソードラットはあっけに取られたように見るしかなかった。
「おいおい、さっき戦ったばかりのわたしを連れて旅しようってんですか。あんた、正気だとしたら一度治療院に行ったほうがいいです。死なないからって調子に乗ってんですかねえ」
甘く見られている感じがしてならないソードラットは、少々苛立ちをにじませて言う。
しかし、モンゼンは気にした様子もなく答えた。
「誤解すんな、死なねえわけじゃねえ。殺されねえだけだ。それに、あんたあのザムってのを助けてやりてえんだろ。顔に描いてあるぜ」
ぐ、と言葉に詰まるソードラット。
「ちっ。そんなんじゃねえ。ただあのバカに恩を着せてやるのは悪くねえと思ってるだけです」
むず痒い気持ちを押し殺して、そう返すしかなかった。
「そういえば」
ソードラットは思い出したように、更に質問を重ねる。
「そもそも丸太食いと、略奪者。ありゃなんでたいした怪我もなく倒れてたんですか?砕いちまうんでしょう、あんたのその手」
「あー……おれが砕けるのは、何も見えるもんだけじゃねえんだよ。意識とか戦意とか、そういうのも砕けるんだ。まあこっちは見えねえ分、ちっと制限があるんだけどな。丸太食いってのはあのでかいのだろ?あいつらは意識飛ばしただけだよ」
もう説明し疲れたのか、うんざりした様子でモンゼンは答える。
「またまた、化け物じみてますねえ。じゃあ、跳ね足の略奪者が赤ん坊みたいになっちまってたのも、あんたがぶっ壊したせいですか?」
ふと、モンゼンがソードラットに視線を向け、驚いた顔で言った。
「なんだそりゃ。おれじゃねえぞ。あー、腹立ってたからな。普通なら何度か死ぬぐらい体の方を砕いてやったけどよ。頭の中をそんな風にいじれるようなもんじゃねえよ」
「あんたがやりすぎたせいで精神が崩壊しちまったのかもしれませんねえ。そもそも、何から何まで常識はずれなんですよ、あんた」
呆れた様子で、責めるようにソードラットはモンゼンを見る。
王都付近を覆っていた雨雲はもう白く薄れ、汗をかくほどの日差しが青い空から注いでいた。
「じゃ、ご一緒しましょうかねえ。いやいやワールドライトをただで護衛になんて、あんたついてますよ」
まだ少し痛む体を動かしながら、ソードラットは言う。
「よく言うぜ、自慢の体毛と髪はぼろぼろじゃねえか」
「おいおい、やったのはあんたでしょう。まあ襲った身ですからねえ、別にいいです」
自分のやったことを忘れたように茶化すモンゼンを軽く睨む。
しかし不思議な男だ、とソードラットは自分が追っていた黒衣の男を改めて眺めた。
ピピルと呼ばれた毛玉とじゃれながら旅支度をしているこの男に、いつのまにか自分の警戒心は消えてしまっている。
守銭奴と揶揄される自分が、あっさり依頼をほっぽり出してついていくことを承諾してしまうとは。
まあザム達へ土産話でも作ってやるか、たまにはらしくないことをするのも悪くない。
ボロボロの体毛から雨をふるい落としながら、ソードラットは自分の人の良さを鼻で笑った。




