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告白、そして・・・

今回は逆に長くなります。

「うわっ!!」

次の日の朝、僕が家のドアを開けるとそこにはさやが立っていた。

「さや、どうしたの?」

「今日、()おうと思うの。」

主語が抜けてるとか、いきなりすぎるとかつっこみたいところがあったけど、焦らせたのは僕自身だったことを思い出した。

「う、うん、それで?」

でもなんで僕にそれを言ったのかわからなかった。

「直前まで一緒にいてほしいの。」

「えっ!?なんでっ!?」

訳がわからず思わず叫んでいた。

「・・け、けいは絶対大丈夫だって言ってくれたけど、やっぱり不安で・・・。けいは誰よりそばにいたから兄弟みたいなもんだし・・安心するっていうか・・なんていうか・・・」

()   ()。   僕はこの言葉にショックを受けた。僕が兄だとしても、弟だとしてもどちらにしても僕に恋愛感情を抱くことはないということだから。そしてショックを受けた自分を愚かだと思った。彼女が、さやが、僕にそういう感情を抱かないことくらいわかりきっているのに。

「だから・・その・・。」

さやはうつむいていて僕のことは見ていなかった。だから僕は気持ちを隠してにっこり笑って答えた。

「いいよ。」

背中を押した以上責任は取るべきだと思った。僕がそういうとさやから笑みがこぼれた。

「ありがとう!じゃあ行こ!」

さやは僕の手をひっぱって歩きだした。

「それで、どうやって()うつもり?」

「ラブレターで教室に呼び出して直接()うつもり。」

「・・・つまり僕には時間になるまで教室で一緒待っててほしいってこと?」

「うん、そう。あ、ひろたちだ。」

さやの声で前を見るとすでに3人ともそこにいた。

「このこと内緒だからね。誰にも言わないでね。おはよー。」

そう言ってさやはひろたちのところへ走って行った。

そしてさやに頼まれた通りにその日の放課後、教室で一緒に指定した時間になるまでいた。

「そろそろ時間だし、僕はもう行くね。」

「うん、ごめん、ありがと。」

僕はさやと別れ、教室を出て帰るフリをし、廊下の物陰に隠れた。そのままそこでひろが教室に入るのを確認した後、教室のドアのわきに立ち、中の会話が聞こえるよう聞き耳をたてた。

「あれ?さや?お前だけ?」

ひろの間の抜けた声が聞こえた。それも当然だ。さやはラブレターに自分の名前を書かなかった。呼び出したのがさやだとは知らない。そしてひろはさやに告白されるなんて夢にも思っていないのだろう。

「うん。そうだよ。」

「あれ?おっかしいなー?俺、ここに呼び出されたはずなんだけどなー?」

ガサっという音がした。きっとひろがラブレターを開いたのだろう。

「ひろ!!」

「うわっ!!」

さやが声を張り上げた。その声にひろは驚いたようだ。かすかにパサっという音が聞こえた。たぶん驚いた拍子にラブレターを落としたんだと思う。

「ど、どうしたんだよ、いきなり。」

「・・・・・・すき。」

「・・・・・・はあ?」

さやの唐突すぎる発言に、ひろは理解が追いついていないようだ。

「私、ひろのことが好き。幼稚園のころからずっと。私とつきあってください。」

教室内に沈黙が落ちる。

「やっぱり、だめだよね。ごめん、忘れて。じゃあ。」

歩く音が聞こえた。僕は慌てた。―早くここから立ち去らなくては―そう思った時に声が響いた。

「ま、まて!!」

ひろの声だった。

「違うんだ。」

「・・違うって・・?」

「・・その・・いや・とか・・そういうんじゃなくて・・。ただ・・お、驚いて・・その・・俺・・も・・俺も、好き・だったから。・・でも、俺・・・お前は、けいが・・けいのやつが好き・なんだと、思ってて。・・だから・・驚いて・・その・・・・俺で・・よかったら、お願いします。」

僕はそこまで聞いてその場を立ち去った――いや、体が勝手にその場を離れた。そのまま僕は屋上に向かっていた。本能的にひとりになりたかったのかもしれない。屋上のドアを開けた瞬間、風が吹き抜ける。僕の足は吸い込まれるように柵へ夕陽の沈む空へ向かった。僕は柵を右手で握りしめていた。そして、

「おめでとう、僕の1番大切な人。」

気がついたら、そう言葉にしていた。言葉にしたら、急に実感がわいた。涙が出た。足に力が入らなくなってその場に崩れ落ちた。次から次へと涙があふれ、とうとう泣き叫んだ。



なんで僕じゃないんだ。1番近くにいたのに。誰より近くにいたのに。ずっとそばにいたのに。ずっと君を支えていたのに。僕の方が君を好きなのに。誰より君が好きなのに。僕の方が君を知っているのに。どうしてあいつなんだよ。僕を選んでよ。こんなにも好きで好きでたまらないのに。どうして。神様どうして。僕は何が足りない?何がだめ?どうして。どうして!教えて、誰か教えて。どうして僕はだめ?誰か、誰か助けて。



どれくらい泣いていたのかわからなかったけど、辺りは真っ暗になっていた。さすがにもう帰らないと帰れなくなるため、慌てて帰宅した。

次の日からひろとさやがつきあいだしたと噂になった。その日から僕はより一層空気になった。もちろん彼らにそんな気はない。だけど僕は少しずつ距離を置くようになった。それと同時に告白される回数が増えた。幼なじみ4人がつきあいだしたから、チャンスだと考えたんだと思う。けど僕は誰ともつきあわなかった。つきあえなかった。ひろ(ひと)とつきあいだしても僕はさやが好きだった。他の人が好きなのに、好きでもない子とつきあえるわけがない。それは相手に失礼だ。僕は結局誰ともつきあわなかった。

今回の話はすごく切なくて、書きながら自分で泣いてしまいました。

今さらながら誤字を発見しました…。(2023/12/21)

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