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ISeWaN

作者: 川里隼生

 伊勢海産・水資源民族連合(Ise Seafood and Water Nations)略してISeWaNイセワン。決してASEANアセアンを意識しているわけではない。決して。


 2001年に発足した機関で、主に伊勢湾の水資源や、それに関わる経済活動を仕切る。加盟しているのは三重県、愛知県、奈良県、岐阜県、長野県、群馬県、栃木県、埼玉県の8県。2006年以降はこれに東京都、大阪府、福岡県を加えたISeWaN+3(イセワンプラススリー)も開催されている。


 今日は名古屋市内のISeWaN本部にて会合が行われる。各都府県の代表が結集した。午後1時。議長県の愛知県代表が起立し、テーブルのマイクを取った。


「えー皆さん。今日はこの、伊勢海産・水資源民族連合の会合にお集まりいただき、ありがとうございます。本日の議題は、三重県産牛肉のキャンペーンのキャッチフレーズ選考です。建設的な議論を期待します」


 他の参加者たちも議長に一礼し、着席する。今日は東京、大阪、福岡の代表も出席している。つまりISeWaN+3というわけだ。


 議題になったキャンペーンというのは、ISeWaNの広報活動の一環として、三重県産牛肉を抽選で10名にプレゼントする、というものだ。これで広報になるかどうか疑問だが、とにかくやるったらやるのである。


「では、まず私から」

 三重県の代表者がマイクを持つ。まずは当事者である三重県側の案が発表された。

『三重県産牛肉があなたに当たる!』

「そのまますぎじゃありませんか?」

 すぐさまつっこみを入れたのは栃木県の代表だ。


「もう少し捻ったほうが良い」

 と言う栃木県代表者はこのような案を発表した。

「ISeWaN、肉を出す」

 これじゃ何を言いたいのかわからん、と栃木県以外の誰もが呟いた。誰かが挙手して発言したわけではないが、空気を察した議長が却下した。


 とにかく、三重県の案を修正して採用することにした。そこで、長野県の代表が「韻をふもう」と言い出した。群馬県の代表は「『当たる』よりも強い表現はないものか」と言う。しかも岐阜県が「『あなたに』よりダイレクトな表現が受ける」と言って聞かない。


 結果として愛知県がそれらを上手くまとめて合意させた。と言うより、午後5時を過ぎてみんな帰りたがっているのだ。

「では、この案でよろしいですか?」

 真っ先に頷いたのは、東京と大阪の代表者だ。ISeWaNの収入は、半分が東京と大阪によるものである。伊勢湾の海産物を売って得る利益だ。よって、彼らの意向は尊重されやすい。


 さて、ISeWaN+3加盟都府県に、三重県産牛肉のキャンペーンCMが放送され始めた。そのキャッチフレーズはこれである。

『お肉がお腹に大当たり!』


 食当たりと勘違いされ、キャンペーンは失敗したという。ISeWaNは今日も、役に立つのかよくわからない活動を行っている。

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― 新着の感想 ―
[一言] これもひとつの異世界(伊勢海)モノ。 人気ジャンルとして定着されるよう応援してます!頑張って下さい!
2016/06/01 19:27 退会済み
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