過激になるなんて聞いてない 2/4 ▲
お兄ちゃんと買い物へ行き、沢山の洋服を手に入れた次の日。
私と美琴は少し早めに登校して、机の引き出しを確認することになっていた。
普段は別々に登校している私達だが、今日ばかりは流石に不安で、駅で美琴と待ち合わせて一緒に登校したのである。
このまま何事もなかったような日常に戻っていてほしい。
その私の願いは、白い封筒が引き出しに入っていたことで無駄であったことを悟った。
それにしても仕事が早い。昨日の放課後で今日の朝に入ってるなんて・・・。新聞か。
そんなツッコミを心の中で入れてみる。分かってる。現実逃避だということくらい分かってる。
でも、この封筒を開ける勇気が持てず、手も動かすことができない。
「朝から入ってるってことは、今朝入れたのか、それとも昨日の放課後に入れたのか、どっちなのかしらね」
そう美琴は冷静に分析すると、封筒を手に取り、慎重に封を開いて、中身を出した。
「これ・・・」
そこには、昨日の買い物をしているお兄ちゃんと私の写真が恐らく入っていた。
なぜ恐らくなのかというと、私が写っている半分側だけ、バラバラに切り裂かれていたからである。
怒ってる。誰か知らないけど送ってきた人絶対怒ってる。
中でも特に一番怒っているように感じたのは、お店を出る時にお兄ちゃんに腕を引っ張られているだろう私の写真が一番細かく切り刻まれているのを見たときであった。
「ごめん。唯花。犯人を煽ろうと思ったのは確かだけど、ここまでなるとは思ってなかった」
その写真は、さすがの美琴さんでも謝るレベル。
「いや、まぁ、事前に相談しては欲しかったけれども、今回の作戦のおかげで犯人の狙いはお兄ちゃんじゃなくて私ってことがはっきりと分かったよね」
昨日まではお兄ちゃん狙いのストーカーがうっかり私の写真を撮ってしまったため、嫌がらせで押し付けてきたのかもしれないという希望的観測があったけれども、どうやら違うみたいだ。
「でも犯人は昨日できる限り道を通る人を眺めていたけれど、人が多すぎて分からなかったなぁ」
なので犯人は柚葉くんなのか、はたまたお兄ちゃんのファンなのか、は分からない。
バラバラ写真の時点で犯人は私に恨みを持っている人物、つまりお兄ちゃんのファンの可能性が高いとは思う。
しかし、好きな気持ちが高まりすぎて、好きになってくれない私のことを写真をバラバラにしないと気が済まないくらい恨んでいる柚葉くん、もしくは私のことを好きすぎる人かもしれないという可能性を捨てきれていないのも事実であった。