物が盗まれるなんて聞いてない 1/2 ▲
タイトル通り、いじめの表現が出てきます。
辛さを感じられる方はタイトルに▲が消えた話から読んでください。
夏休みは、絵を描いたりオタク活動をしたり美琴と出かけたり、お兄ちゃんと後花火大会に行ったりご飯を食べに行ったりと、それなりにお出かけをしたりして、充実した日々を送っていたら、気がついたら、新学期になっていた。
夏休みなんてあっという間である。
2学期のスタートである実力テストも夏休みにそんなに勉強していなかったわりには解けたような気がするため、良いスタートを切ったと言えるのではないだろうか。
そう、思えていたのも最初だけであった。
「あれ……」
おかしいな、と思い始めたのは、夏休みが明けて10日後のことだった。
登校して履き替えようと思ったら、上履きがないのである。仕舞う場所を間違えたのかと思い、上下左右の下駄箱を一応開けてみるが、もちろん私の上履きがあるわけはなく。
「んん?いやいやいや」
仕舞い損ねるはずがないし、もちろん置き忘れるわけはない。
上履きに足が生えて何処かへ去っていくはずもないし、羽が生えて空を飛ぶはずもない。
誰かが盗んだ可能性が一番高いのだが、心当たりが多すぎる。
何なら美琴以外のこの学校の女子全員に恨まれているといっても過言ではない。
でも、分からないのはタイミングだった。夏休みが開けたタイミングで嫌がらせをされたところで、今更感が半端ない。
うーん。今まで彼女であった佐鳥先輩に向かっていた嫌がらせが、再び妹である私に向いた、とかなのだろうか。
それともお兄ちゃんとの仲を取り持とうとしないこの姿勢にムカついて、嫌がらせしようとかいう魂胆なのであろうか。
入学当初にも嫌がらせのようなものはあったけれど、それも相手にしていなかったら少しして収まったため、今回もあまり気にしないようにしようと思って、私は下駄箱を閉じた。