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こんな勉強会になるなんて聞いてない! 1/3

六月。六月といえば、一般的には梅雨のイメージだろう。


しかし、睦月高校はテストだけはなぜか二学期制なので、睦月校生にとって、六月といえば六月下旬にある中間テストなのであった。


「はぁ」


体育祭が終わったかと思えば次はテストかー。まぁね、テストも三学期制だと体育祭とテストが平行してあるのでもっと大変なのだろうけれども、二学期制だとテスト範囲が広くなる上に体育祭期間中の授業内容は体育祭が終わった未来の私に任せようと若干適当になるところが、テストだけが二学期制の学校の欠点ですよね。


などと言い訳しながら、見返して思う。自分のノートの適当さ。


いや、やっぱり体育祭の練習って大変じゃないですか、眠くなりますよね。眠さに耐えながら必死でノートを取ると恐ろしいくらい崩壊している自分の字とか、なぜか書き忘れている謎の余白とかが自信満々に間違っている答えが書いてあったりしますよね。


例えば、x=3って書いてあるけど、何度解き直してもx=5になる数学とか。たぶん5が正解だと思うだけど、でも3で丸付いてるしなー。どっちが正解なのかなー。


はぁ。困ったなぁ。全体的にとりあえず黒板写してみました!みたいな感じでしか理解してないし、恐ろしいほど範囲の広い英単語も覚えないといけないし、英語の長文も謎が多いし、とにかくテストにむけてやらないといけないことが多いのに。


その基本となるノートが使えないとなると勉強が出来ない。


とりあえず英単語を暗記しながらこういうときに頼りになる美琴が登校するのを待つことにした。


梅雨の所為で電車が混むだろういつもよりかなり早い時間に電車に乗った私が、もの凄く早く学校に着いたのに対し、自転車通学の美琴は梅雨でもいつも通りの時間に登校するつもりらしい。


羨ましい。朝ぎりぎりまで寝ていられる美琴が羨ましい。けれども家から学校まで自転車を漕ぐという労力を費やすくらいなら私は早起きする方を選ぶぜ!無理。朝からそんなに疲れることは出来ないし、疲れているのに家に帰るのに自転車を漕ぐことなんて出来ない。


だからこそ自転車で体力をつけなよと言われれば、反論できない。


「おっはよー」


英単語の暗記がなかなか進まず、頭を抱えていると、暢気な声とともに美琴が登校してきた。


良いですねぇ。自転車通勤の人は遅い時間に登校出来て、と思いながら英単語帳から顔をあげると、六月にもかかわらず、なぜか美琴はひどく汗をかいていた。


「うわ、美琴大丈夫!?汗びっしょりだよ!?」


「へ?あぁ。大丈夫大丈夫。いやー、やっぱり合羽を着て自転車漕ぐと超暑いね!今日特になんかじめじめしてるから、凄く汗かいちゃっただけ」


確かに今日は暑かった。そっかー。自転車通学も自転車を漕ぐ以外にもいろいろ大変なんだなー。


「はー。自転車を漕いだ後の紅茶は最高だわー」


そう言って優雅に失った水分を補給している美琴に、私は本題を告げる事にした。


「ところでさ、その、優雅に紅茶を飲んでいるところ悪いんだけど、テストに向けてノートを貸して頂けませんか?」


その一言で、大体察したらしい。まぁ、中学の頃からテストになると毎度のことなので、当たり前といえば当たり前なのだけれど。


「あんたってさ、すごく真面目なのに、どうしてノートだけは毎回あたしから借りないといけないくらい適当なの? 凄く謎なんだけど」


「奇遇だね、私も謎だよ」


まぁ、多分あとで美琴に借りれば良いか、みたいな気の緩みがそうさせるのではないか、と思う。言ったら絶対に怒られるから言わないけど。


「はぁ、仕方ないわね」


そう言って美琴は今日の午後の授業のノートを貸してくれた。午前中の午後の授業のノートを写して、午後に午前中の授業を写せば、スムーズにノートの交換が出来るのである。


「ありがとうー!!あとさ、今週の土曜日勉強会しない?いろいろ美琴に聞きたいところあるんだけど」


それまでにどこが分からないのかしっかり把握しておかなければ。


「勉強会?良いわよ。それならあの勉強会が出来る図書館でしない?」


あぁ。学生が勉強会が出来るようにと最近改装された自習室がある図書館か。確かにどちらかの家に行くよりかは気が楽かもしれない。


「良いよ!というか、教えてくれるならどこでも良いよ!」


「どれだけ切羽詰まってるのよ」


むしろ美琴さんが余裕すぎなのでは、と思いつつもなんと思われても良い。とりあえずテストはなんとかなりそうだな、と少しだけ胸を撫でおろしていると、


「へー。勉強会するの?なら俺と柚葉も混ぜてくれない?」


急にすっと現れた福岡くんが、爽やかな笑顔でそう言った。


「え」


それには流石の美琴も驚いたらしい。勿論私だって予想外だ。


「お願い!テスト本当にやばいんだよね!!人助けだと思って!!この通り!」


そう両手を合わせてお願いしてくる福岡くんを断るにはよっぽどの理由が必要だけれども、そんな理由は特にない。


だから私たちは顔を見合わせて、「いいよ」と言うしかなかったのだが。


美琴の事が好きで、美琴と距離を縮めたい福岡くんの気持ちは分かるけど、仲良くしないでとお兄ちゃんに何故か言われた柚葉くんも一緒かと思うと、楽しみだった勉強会が少しだけ憂鬱になってしまった。

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