こんなに晴れるなんて聞いてない!2/5
「あ、静岡さんに三枝さんじゃん!何の話してるのー」
私と美琴が話していると、そう福岡くんが声を掛けてきた。ちなみに福岡くんの隣には柚葉君もいる。
柚葉君とはゴールデンウィーク明けの教室でお互いに謝ったけれど、それでも何となく気まずい空気になってしまった。
いや、お兄ちゃんのあの発言の所為で私だけが気まずいと思っている可能性もある。可能性もあるけれども、柚葉くんの方も何となく気まずそうにしているとは思う。
それにしてもどうしてお兄ちゃんはあんなことを言ったのだろう。やっぱりあの時に勇気を出して聞くべきだったのかもしれない。けれど、もう一度あの場面に今タイムスリップ出来たとしても、きっと聞けないと思う。それくらいあの時のお兄ちゃんは、儚かった。
「出場する競技の話。福岡くんと千葉くんは何に出るの?」
「えっと、俺は借り物競走と800メートルリレーで、柚葉は800メートルリレーと二人三脚かな。二人は何に出るの??」
うわ、二人とも二競技に出るのか。言いづらいなー。私一競技しか出ませんって言いづらいなー。
「あたしは100メートル走と障害物競走と棒引きで、唯花は50メートル走よ」
そんな私の気も知らず、美琴はズバリと言った。
「あれ、静岡さん三競技も出るの?大変じゃない?」
すみません。一競技しか出場しない人が隣に座っていてすいません!
何か代わりに出た方が良いしれない。足は遅いけれど、100メートル走なら出ても良い。
「まぁ、大変だけど、おかげで涼しい思いをしているからいいのよ」
あぁ、うん。そうだね。きちんとそれを言わないと私が美琴にいじめられてるみたいに見えるもんね。
「ひゅー!静岡さん恰好良いー!!……じゃあそろそろ俺らリレー出ないといけないから行くね。お互い優勝できるように頑張ろうね」
そう言って二人は去ってしまった。福岡くん爽やかだなー。福岡くん、終始美琴のことしか見てなかったから美琴のことが好きなのかもしれない。かもしれないというか、私よりも美琴の方が好きであることは間違いない。
「で、あんたと千葉君何かあったの?」
などと考えつつ2人の背中を見送っていたら、美琴が名探偵っぷりを発揮していた。
まぁ、いつかは聞かれるだろうな、とは思っていたけれど、まさか今聞かれるとは思っていなかった。
最近の私と千葉君との空気がおかしかったのと、今さっき私と柚葉くんが言葉を交わさなかったことから、聞くことにしたのだろう。
実は美琴にあの事件の話をしていなかったりする。私の中で解消しきれていないことと、時間が経てば経つほど夢だったような気がしたからだ。
だから、私の中の答えは一つだ。
「私と千葉君とは、何もなかったよ」
あったのはお兄ちゃんと千葉君だし!嘘じゃないし!
「……。そう。ならいいわ」
きっと名探偵の美琴にはこのことが嘘に近いことはバレていると思う。けれど、この名探偵は暴いて欲しくない謎は暴かない主義だから、このことも優しさで見逃してくれたのだろう。
本当に美琴は、優しい。