こんなに晴れるなんて聞いてない!1/5
実を言うと体育祭というものがあまり好きではないので、看板は頑張って作成したものの、雨が降って中止にならないかなーと少しだけ期待していたのに。
朝起きてカーテンを開けて天気を確認してみると、それはもう恐ろしいくらいに晴れていた。
まぁ、天気予報で晴れるってことは知ってたんだけど万が一っていうこともあるし、それにここまで快晴じゃなくてもいいじゃないか……!
というか、体育祭っていうのは曇りくらいが丁度良いんだよ!!と開会式で空を恨むほど、日差しが暑い。
あっついのに長々と話をする校長先生とか偉そうな人はもう少し生徒の事を考えて欲しいなーと思いながらじりじりと待っていると、ようやく開会式が終わった。
暑い日差しの所為で、立ってただけで疲れた……。と思いながら美琴と一緒にテントに戻る。
日陰に戻って水分補給をすると、少しだけ落ち着いた。日陰最高。
「あー。暑いー。エアコン。エアコンが欲しいわ」
隣の席で美琴はパタパタとタオルで自分を仰ぎながら、それは大層無茶な発言をした。
「多分それは無理だと思うよ」
「分かってるわよー。でもさ、自分たちの孫の体育祭の頃にはエアコン付いてるかもしれないじゃない!」
いや、わかんないけど多分無理だと思う。そんなに未来に期待してはいけない。
「そ、そうだね」
というか、そんな突拍子もないところでポジティブになられても反応に困るんですけど!!
「はぁ。もう駄目。暑すぎて脳が溶けたみたい」
自覚はしていたんですか。
「えっと、唯花はなんの競技に出るんだっけ」
持ってきていた保冷剤を額に当てていたおかげか、少しだけ溶けていた美琴の脳は固まってきたらしい。
「私は50メートル走と団体競技かな。美琴は?」
ちなみに団体競技は一年生は全員綱引きで、二年生になると、男子は組体操、女子はダンス、三年生になると男子は騎馬戦、女子はダンスという、非常に男子に優しくない競技選択なのだった。
確かに組体操も騎馬戦も派手かもしれないけど、もう少し安全そうな競技に変えたらいいのに、と練習風景を見たときに思った。もっと派手で安全な競技を新しく考えるとかでも良いから、なんとかして欲しいと思う。
「あぁ。そういえばそうだったわね……。私は100メートル走と障害物競走と棒引きと綱引きよ」
「あれ?美琴多くない??」
個人競技に三競技も出るって、元気だなぁ。
「あんたみたいに一競技しか出ない人がいるからあたしが三競技出る羽目になるのよ!」
くわっと目を見開いて美琴はそう言うけど、えぇっと、そうだっけ。
「あれ?一競技から二競技出てね?って話じゃなかったっけ??」
そう。だから運動苦手だし一競技で良いかー。みたいな気持ちで50メートル走だけ出ることにしたんだけど。
「そうだけど、思っていた以上に二競技出る人が少なくて、どうしても最後の一つの枠を出場する人が決まらなかったからあたしが出る事になったの!!」
そういえばなんか揉めてたような気がする。自分には関係ないかーとか思ってぼうっとしていてごめんなさい。
「だから労りなさい!!」
そう言って美琴はタオルを私に押しつけてきたので、仰いであげることにした。
「はー。涼しい」
でもまぁ、美琴は体育の授業でバスケをすればバスケ部から勧誘がくるし、本人も「オタクでなかったら何かしらの運動部に入っていた」というくらいには運動神経抜群なので、何の競技に出てもそつなくこなすだろう。
「というか、なんであんた足遅いのに50メートル走にしたわけ?借り物競走とか、あまり運動神経に関係なさそうな競技にすれば良かったのに」
まぁ、確かにそうかもしれないけど。
「借り物競走なんて、運要素が絡んでくる競技なんて嫌だよ!運悪かったらすごく時間掛かるじゃん。それよりは安定していて最も短い時間で済む50メートル走が最善の選択である」
つまり、競技をしている時間が最も短い時間である50メートル走が、たとえ最下位でゴールしたとしても、結果的には目立たないのである。
「最も短いと言っても、走るのは遅いけどね」
「うるさい」