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桐葉の弟なんて聞いてない!(side 真咲)

あー。今日の湊は部活張り切ってるなぁ、と思わずしみじみと思ってしまうくらい今日の湊は張り切って素振りをしていた。


どうして今日は気合い十分なのかというと、唯花ちゃんが部活見学に来るからだ。


しかしその気合とは裏腹に、唯花ちゃんは少しだけ美術部に寄るらしくて、まだ来ていなかった。まぁ、湊には悪いけれど、あまり早く来られてもこっちもいろいろ忙しいので、遅く来てくれるのは正直助かる。


何故そんなに忙しいのかというと、湊や俺目当てに部活見学しに来る奴らが大勢いるからだ。今年は新入部員希望がもの凄く多いので、贅沢な話であるのだが女子マネージャー希望は全員断ることにした。マネージャーがいないと面倒な場面も出てくるとは思うのだが、いた方がもっと面倒なことになる自信がある。


というか、只でさえ剣道をしたいという入部希望者がたくさんいて、この先の剣道部の運営に頭を悩ませているというのに、これにさらにマネージャーのごたごたを足すわけにはいかない。


はぁ。本当にどうしたらいいんだろう。正直。新入部員を厳選したくはない。せっかく剣道したいって来てくれた人は初心者でもなんでも、剣道に本気なら是非とも部活に入ってほしい。だけど、武道場で練習出来ないほどの部員はどう考えても多いよなー。あぁ。どうしよう。


「見学じゃなくて、入部希望なんですけど」


などと考えていたら、再び入部希望者が入部届を提出しに来た。なかなかのイケメンに見える。ますます剣道部の人気が出ちゃうじゃんとか思いつつ、差し出されたプリントを受け取って、書類に不備がないかどうかを確認する。


「はいはい。えっと、千葉柚葉(ちばゆずは)くん、と。……って千葉!?」


もしかして、桐葉の弟だろうか。そういえば初めて会った時に弟がいて、剣道をしているというようなことを言ってたような気がする。改めて顔をよく見れば、桐葉に結構似ていた。けれど桐葉と違って、髪の毛は真っ黒で、ピアスも開けていないので、見た感じが全然違う。


「あ、いつも愚兄がお世話になってます」


それになにより、全然ちゃらくなかった。全体的な雰囲気が正反対と言っていいくらい違う。だからさっき入部届を受け取るときに少し顔を見ただけでは、気が付かなかったのだろう。


「いや、こちらこそいつもお世話になってるんだけど・・・・・・。本当に桐葉くんの弟?」


けれど愚兄としか言ってないし、もしかしたら違う人の可能性もあるので、失礼な質問かもしれないけど、一応確認してみることにした。


「はい。よく聞かれるんですけど、本当に弟です」


本当だった。へー。桐葉も道を少し違えていたらこんな感じだったのかな、と思いながらも、再度書類を確認する。


特に不備はないようだった。


「いつから剣道してるの?」


「えっと、小学三年生のときからです」


今後の参考のために聞いたのだが、中学から始めた俺より剣道歴長い。


「道具もあるみたいだし、今日から練習参加して良いよ。一ヶ月間は仮入部になるから。これからよろしく」


背も俺より少し低いくらいだけど、高校一年生にしては十分高い方だし、体幹がしっかりしているので、相当な手練れと見た。気を抜いていたらこいつレギュラーの座を持って行かれることなりかねない。


「はい。よろしくお願いします」


そう言って礼をして去っていく後輩の背中を見ながら、上手い奴なんてどんどん現れるわけだし、今年一年もしっかり練習して絶対にもっと上手くなってやる、と俺は気合いを入れ直した。

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