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昼食会なんて聞いてない!(side湊)

本日二話目の投稿です。

「真咲、部活見学の件、頼んだからね!あと、何か変なところないかな!?」


生徒会長の椅子に座って鏡で容姿を確認しながら、俺は改めて真咲に確認した。


「了解了解。変なところ?うーん。強いて言うなら・・・テンションかな?」


テンションか・・・・・・・。テンションは鏡じゃ分からないな。


「そっか・・・・・・落ち着く」


とりあえず深呼吸することにした。深呼吸を繰り返してみても、一向に落ち着かないので、俺は相当緊張しているのだと思う。


「お招きいただき、光栄ですわ」


そんなことを考えていたら、ドアががらりと開いて堂々と女の子が入ってきた。唯花じゃなかったので、美琴ちゃんだろう。やっぱり入学式で堂々と寝ていたのは美琴ちゃんだったのか。


「お邪魔します」


唯花は美琴ちゃんの後ろからおずおずと入ってきた。もっと美琴ちゃんくらい堂々と入ってきてくれてもいいのに。可愛い。


「どうぞどうぞ。こちらへ」


真咲はいつの間にか四人で向かいあって座れる席を準備していたらしく、そう言いながら席を勧めていた。


「どうも」


そう言いつつ椅子に座る唯花が生徒会室にいるのがなんだか信じられなくて、その光景をぼうっと眺めていたら、真咲がもの凄い形相と身振り手振りで、唯花の向かい側の席に座れと言っていることに気がついたので、急いで席に向かう。


「初めまして。三枝(さいぐさ)湊です。よろしく」


そしてとりあえず美琴ちゃんに自己紹介をすることにした。


「初めまして、静岡美琴です」


握手を交わしながら目をしっかりとこちらを見る美琴ちゃんはなんというか、目力がある。芯の強そうな女の子だ。


「どうも、若山真咲です」


お茶を出し終わった真咲はそう言いつつ軽く頭を下げた。というか、机をセットした上にお茶まで出してくれるなんて、真咲はなんて用意が良いのだろう。流石真咲。


「えっと、三枝唯花です。よろしくお願いします」


ぺこりと真咲にお辞儀をする唯花は、超可愛い。初めて会ったときは父さんが勝手に話を進めていたので、自己紹介をする唯花は初めて見た。貴重だ。


「いただきます」


お弁当を広げて、その合図とともに俺たちは一斉にご飯を食べ始めた。


「今日のハンバーグの味付け、どうかな?いつもとちょっと作り方変えてみたんだけど」


メインのハンバーグは、夕飯の時と食べる時の温度が違うので、お弁当の時用にレシピを変えてみたのだが、味付けが心配だった。まぁ、多少下心もあるけど。


「大丈夫、いつも通りおいしいよ。・・・・・・作ってくれてありがとう」


はい!ばっちり脳内保存しましたっ!!!唯花可愛いよ!可愛すぎるよ!もうこの後の学校とかどうでも良いから、ここから唯花を連れ去ってどこか遠くへ行きたいくらい可愛いよ!


あぁ。俺のお弁当食べてくれている唯花を眺められるなんて幸せだなー。


「あー。えっと、唯花ちゃんは高校でも美術部に入るの?」


と、眺めていたら真咲が話しかけたので、唯花はお弁当を食べる手を止めた。


「はい。あと、美琴も同じく美術部に入る予定なんですよ」


そうだよね……。剣道部のマネージャーにはなってくれないよね。唯花と美琴ちゃんの仲の良さに軽く嫉妬する。あぁ。俺も美術部にやっぱり入れば良かったなぁ。今からでも入部したいけど、真咲に剣道部の部長を押しつけられたので、それももう叶わぬ夢だ。


「へー。そうなんだ。あー。そういえばさ、明日から一週間部活の体験入部期間じゃん?決まってる部活あるならその一日をさ、剣道部見学に費やしてみない?」


俺は部長なんてなりたくないので、剣道を愛している真咲が部長になりなよと言ったのだが、部長より強い部員がいるなんて嫌だとか言って部長を俺に押しつけて真咲は副部長になっていた。実質真咲が部長の仕事を全部しているようなものなので、別に俺が部長でもかまわないのだけれど、部長の仕事をしている真咲を見ていると、真咲が部長になれば良かったのと凄くいつも思う。


「えっと」


とか考えていたらいつの間にか俺が真咲に事前に聞くように頼んでいた質問を唯花に聞いていた。一度で、一度で良いから俺の部活で活躍しているところを見てほしいなぁと唯花の返事を待つ。


「いいですよー!丁度剣道部見学してみたかったんです!ねー。唯花」


祈るようにして唯花の返事を待っていたら、何故か美琴ちゃんが返事をしていた。本当に?本当に見学に来てくれるの?


「へ?ちょっと美琴」


と思ったら美琴ちゃんの独断だったらしく、なにやら女子同士で小声で話している。見学来てほしいなー。来てほしいなー。


「・・・・・・私も行きます」


俺の祈りが通じたのかそう唯花が言ってくれたので、俺は心の中でガッツポーズをした。やった!よし!今日は張り切って部活の練習しよう!唯花が来たときに格好良いところを見せれるように!!頑張ろう!


「ならさ、連絡先交換しない?見学来てくれる時、連絡貰えた方が便利だし」


という真咲の発言で、俺は美琴ちゃんの連絡先をゲットしたのだった。唯花に繋がる大切な糸なので、電話番号もメアドもしっかり暗記することにする。


「あー。えっと、お二人はいつからの友達なんですか?」


連絡先を交換したあと、唯花がまだ少し残っているお弁当を食べているところを眺めていると、美琴ちゃんがそう聞いてきた。


「俺が小学四年生の時に湊の学校に転校してそれからなんとなく仲良くなったかな」


なんとなく仲良くなったではまるで真咲が俺のクラスに転校してきたみたいだとは思うけれど、そのことを訂正するよりも唯花と美琴ちゃんがいつどうやって仲良くなったのかの方がすごく気になった。


「そういう唯花と美琴ちゃんはどうやって仲良くなったの?」


ので聞いてみることにした。


「えっと、中学一年生の時に同じクラスになって、名字的に席は近かったんですけど、違う小学校だったし最初の頃は仲良くなくて、美術部で同じってことが分かっても仲良くならなくて・・・・・・。あれ、どうやって唯花と仲良くなったんだっけ?」


へー。中学生の頃からなんだ。もっとつきあい長いんだと思ってた。


「中学一年の夏に、クロッキーのペアに無理矢理先生に組まされたからだよ」


「あー!そういえばそうだったわね」


なんだろう。初めて会ったときの仲の良くなさが俺と真咲みたい。


「無理矢理って?っていうか何でそんなに距離感あったの?」


確かに俺もそれは気になる。


「それはその・・・・・・。美琴が怖くて距離感取っていたら、顧問に無理矢理仲良くしろとペアを組まされました」


「怖がられているのは知っていたので無理に近づかないようにしていました」


なるほど。唯花って基本的に他人に対して警戒心が強いのかもしれない。


「じゃあ、唯花も食べ終わったみたいだし、次の授業の準備があるのでそろそろ失礼しますね」


などと考えていたら鞄を持ち直して、美琴ちゃんと唯花ちゃんが立ち上がっていた。えぇ。時間の経過が早すぎる。まだまだ一緒に居たいよー!


「じゃあ、また」


けれど、真咲はなにも引き留める言葉を言わないし、


「はい、ではまた」


唯花と美琴もお辞儀をして去ってしまいそうになるから、俺は苦し紛れに思いついた伝言を口で伝えることにした。


「あ、唯花。僕今日部活に行くから帰り少し遅くなるね。あと、夕飯の買い物して帰るから」


今夜の夕飯はなににしようか。昼食がこれで終わってしまうので、次に頑張るのは今夜の夕飯だ。


「え、お兄ちゃん部活に行くなら、私が夕飯の買い物して作るよ」


優しい!唯花優しい!超可愛い!


「大丈夫、今日お昼ご飯つきあってくれたお礼に作るから」


ね、と言うと唯花はうんとうなづいてくれたので今夜の夕飯は張り切ろうと思いました。


去りゆく二人の背中を廊下で見送って、生徒会室に戻ると、もの凄く寂しさが身を襲った。うわぁ。寂しい。


「俺たちも戻ろうぜ」


てきぱきと生徒会室を元に戻す真咲はなんていうか、副会長の鑑だと思う。そう思ったらまだお礼を言っていなかったことに気がついた。


「ありがとう、なんかいろいろ」


今日のことだけじゃなくて、いつもの何気ないことまでもカバーしてみる。伝わるかわかんないけど。


「おう」


けれど、そう言った真咲は少しだけ照れているように見えた。

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