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プリクラなんて聞いてない!4/4

「お金!お金崩してくるね!!」


両替機を見たお兄ちゃんはそう言ってお金を崩しに行ったので、私は久々のゲームセンターをキョロキョロと眺めることにした。


へー。最近のゲームセンターのクレーンゲームの景品っていろいろあるんだなー。フィギュアのクレーンゲームにものすごく心ときめいたが、絶対に取れないと思うので挑戦はしない。オタクがバレるし。


え……。ドレッシングのクレーンゲームあるんだけど!!凄い!確かにクレーンゲーム好きだけどフィギュアもぬいぐるみもいらないぜ!っていう人には食べ物とかが向いているのかもしれないなーと思いつつドレッシングのクレーンゲームを眺めていると、


「唯花ドレッシング欲しいの?」


とドレッシングのクレーンゲームにお金を入れながら兄は言った。


「え、いや」


確かに好きなメーカーのドレッシングではあるけど別にクレーンゲームで欲しいほどじゃない。むしろ隣のニャルルル!のフィギュアが欲しい。


しかし兄は止める間もなく、そしていとも簡単にドレッシングをゲットして、嬉しそうな顔で


「はい」


とドレッシングを渡してくれた。わー。スーパーで買うより安いね!という捻くれた感想以外思いつかないので、ここは素直にお礼を言っておこう。


「ありがとう」


きっと兄はクレーンゲームがしたかったけど他に欲しい商品がないタイプの人間なんだな……。


まぁ、好きなドレッシングだし今あるドレッシング使い終わったら使おうと思って鞄に入れた。うわ。学生鞄の中にドレッシングってものすごく似合わない。


「他に欲しい物ない??あ!あっちには洗剤があるよ!」


そう言って洗剤を取りに行こうとする兄に、他には大丈夫だよと言おうと思ったものの、嬉々としてクレーンゲームに挑戦している兄を見たら好きなだけクレーンゲームさせてあげようと思った。


うん。好きなだけしてくれていいけど、液体がたくさんになると重たいから渡してくれなくて大丈夫です。


という事実に洗剤を二本取ったところで兄は気がついたらしく、クレーンゲームはそこで終わった。


それにしてもお兄ちゃん上手かった。空間把握能力が高いからだろうか。


そんなことを考えながらクレーンゲームの所から少し歩くと、ゾンビを銃で倒すゲームがあって、せっかくゲームセンターに来たので、してみたくなった。


「お兄ちゃん、あのゲームしたいんだけど」


どうせすぐにゲームオーバーになるとは思うけどね!


「へー。射撃ゲームか……。二人でもできるんだね。ゾンビを倒して建物から脱出するのか。分かった!僕が絶対に唯花を守るよ」


そう真剣な表情で言った兄はその言葉通り、私がどんなに下手くそな射撃をしても華麗にフォローしてくれて、二人のキャラクターは無事に生還してしまったのである。


途中からはプレイしたい人なのか分からないけど、見物人がたくさんいて恥ずかしかったのだが、大抵の人は画面よりも颯爽と銃とペダルを操作する兄を見ているようだったので気にするのはやめた。


その後はドラムのゲームで本物のドラマーになれるんじゃないのか、というくらい上手い兄のドラム捌きを見て、太鼓を一緒に叩いてそしてプリクラのコーナーにたどり着いた。


プリクラはいいか、と思ってUターンしようと思ったのだが、兄はどうやらプリクラを撮りたいらしく、いろいろなプリクラの機械を見て吟味している。


「これ、このプリクラ機械にしよう!!」


プリクラは撮りたくないなーと思ったけれど、イケメンだけどプリクラを一人で撮るナルシストな人に兄をさせるのは心が痛んだ。


ただの写真じゃないか……!!と思って臨んだ私のプリクラの笑顔は引きつっていました。


いや、だって無理だよ……。お兄ちゃんの隣に並んで写真に映れっていう方が、一人でプリクラを撮るイケメンよりもかわいそうだったわ……。


なんとか落書き画面で私の存在を消せないかと試行錯誤してみたものの、その度兄に修正されて、あっという間に落書きの時間が終わった。


全然私の顔が隠れていないプリクラを、私は二度と見ることはないと思います。


ちょ、お兄ちゃんが携帯に写真転送してる!!うわ!絶望した!


「あ!そうだ!プリクラ携帯電話の後ろに貼ろうかな」


やめてください!ラブラブカップルじゃないんですから!というか、ラブラブカップルでも最近は多分しないから!!


「お兄ちゃん!本当に本当にそれだけはやめて!というかこのプリクラ封印しておいて!!」


「え!?なんで!?」


「何ででも!!」


その攻防は家に帰ってからも続いたが、最終的に兄は納得してくれて安心した。


うん……。ものすごく疲れた1日だった。

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