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急な雨が降ったら、迎えに行くものだと聞いていました。

義理の兄との距離感は縮まらないまま、新学期が始まり、そして新学期最初の土曜日がきた。


案外難しかった実力テストの反省もあり、昼食後も部屋で勉強していると、三時頃に部屋のドアのノックの音が聞こえた。


返事をしてドアを開けると、兄がコーヒーと共に笑顔で立っていた。


「勉強中に悪いかなって思ったんだけど、これコーヒーの差し入れ」


「あ、ありがとうございます」


最近、兄は部屋に篭っていると時々コーヒーを持ってきてくれるようになった。


それは慣れないけれど、とても嬉しいことだった。


「あと、スーパーに買い物に行こうと思うんだけど、何か買ってくるものある?」


「あ、えっと私も行きます。家の買い物ですし」


そういえばそろそろ買い物にいかないと材料がないんだった。


基本的に家事は自分のことは自分でするスタイルなのだが、料理は当番制なのである。


なので買い物は週末にまとめて一緒に買いに行くことになっているのだった。


ちなみに平日に材料が足りない時は学校帰りに買って帰る。


「勉強中なんでしょ?大丈夫だよ。僕一人で。何か買ってくるものある?」


そう優しく微笑まれては何も言えない。


「すみません。えっと、じゃあ今週中にパスタを作りたいので麺をお願いしてもいいですか?」


「了解。じゃあ、僕が出かけても気にしないでね。勉強頑張ってね」


兄はそう爽やかに言うと去っていった。


気を使われてしまった…でも使ってくれた気を無駄にするわけにはいかない。


しばらく休憩しようと思っていたのだが、休憩はコーヒーを飲むだけにして、再び勉強をすることにした。



「あ、雨だ」


兄が出かけてからしばらくして、急に雨が降ってきた。しかもパラパラではなくザーザーと。


もしかしたらあの完璧な人のことだ。傘を持って行っているかもしれない、と玄関を確認しに行くと、そこにはバッチリ傘が残っていた。


ですよねー。さっきまでとても晴れていたから、傘を持って行こうとは思わないだろう。


近所、とはいえ歩いて10分くらいのところにあるスーパーにたくさんの荷物を抱えた兄が、たとえ傘を買ったとしても帰るのは大変だろう。


傘と外を眺めて私は決心した。


元々買い物に一緒にいくつもりだったし、迎えに行こうと。


それくらいは普通の家族もするだろうと思った。

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