誕生日プレゼントなんて聞かれても困る。 5/5 (side 真咲)
というか、本題をすっかり忘れていた。
「やっぱり傾向から考えて、実用性の高い物が良いんじゃないか?美術系の道具とか……」
筆とか、絵の具とかが無難で喜ばれると思う。
「いや、相手の趣味の物をあげるのはリクエストを受けたときだけがいいよ。相手が詳しい物は、相手が詳しい分だけ難しい」
な、なるほど。桐葉も役に立つアドバイスも出来るじゃないか。
ダイヤの指輪とかふざけた事言ってた時に帰さなくてよかった。
「なら、そうだな……。来年から高校生になるわけだし、そう言う時に役立つアイテムとかがいいんじゃないか?」
我ながら天才的なアドバイスを閃いたと思う。高校生という俺たちの詳しいフィールドで、尚且つ実用性のあるものなら絶対に喜ばれるに違いない。
「鞄とか……?」
湊は鞄を提案してきたけれど、鞄は本当に色々あり過ぎて難しいと思う。
「いやいや、ここは一つ万年筆っしょ??」
どうして桐葉は具体的な名前を出す段階になるとふざけてくるのか。
「お前は何処の親戚のおじさんだよ」
というか、今時高校の入学祝いに親戚のおじさんでもプレゼントする人少ないと思う。
ん……?入学祝いであげる物、か……!
「分かった!腕時計だ!腕時計だよ!受験の時にも使えるし、高校生になってからも使えるし」
おしゃれで性能の高い物を買えば、普通に便利だろう。何本かあっても困らないし、湊から聞く唯花ちゃんのイメージで言うなら、そう何本も良い腕時計を持っていそうな感じには思えなかった。
あくまで俺のイメージだが、唯花ちゃんはあまりお金を使わないタイプだと思う。
「えー。時計?つまんなーい」
桐葉のつまんないはそれで良いよってことだろう。多分。
「そうだね。受験でも役に立てるし、腕時計って携帯に活躍の場を奪われつつあるけど、あると便利だし、腕時計にする」
その返事を聞いて、良いアドバイスができて良かった、と心底安心したと同時に物凄く疲れが襲ってきた。
これだから湊の唯花ちゃん関連の相談事は面倒臭いんだ。
手早く帰る準備をしながら目を爛々と光らせる湊はきっとこれからの一週間、どの時計をプレゼントしたら喜ばれるのか時計について研究するのだろう。
きっと高い時計になって唯花ちゃんがびっくりするんだろうな……。
湊がこういう奴だと理解してくれていると良いんだけど。
「二人ともアドバイスありがとう!」
そう言いながら笑顔で生徒会室を去っていく湊の背中を見送りながら祈った。
どうか唯花ちゃんが喜んでくれますように、と。