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正論なんて聞いてない!2/2

「……。美琴はずっとあの家に住んでるんだっけ?」


「そうだよ。うちはお兄ちゃんが生まれたときに家を建てたの」


ずっと同じ家に住んでいるのなら、これから伝えたいことがあまり伝わらないかもしれない。


「私あんまり本当のお父さんのこと覚えてないんだけどね、少しだけ覚えてるの。……昔はお父さんの仕事が変わるたびに住んでるところが変わって、豪華になったり質素になったりしてたんだよね」


お父さんとお母さんが離婚した時、全然理解できなかった。


勿論子供の前だったから嫌なものを見せなかったのかもしれないけど、私の覚えているお母さんとお父さんは仲が良さそうだったから。


だから、いつかお父さんは絶対に戻ってきてくれるんだって心のどこかで思っていた。


再婚には、お母さんが幸せになって欲しいから反対しなかったけれど、こんな生活を送る日が来るなんて一切思ってもみなかったから、今の生活の全てが未だに信じられずにいる。


「だから家って結局親の持ち物であって自分はそんなに関係ないというか……。上手く言えないんだけど、自分がお金を稼げるようになって住むようになった家が豪邸だった時に初めて私はお金持ちを実感するんだと思う」


そして自分で稼げるお金で多分豪邸は買えないので、私は一生お金持ちを実感しないのだと思う。


「言いたいことは分かる。あたしは、ずっとあの家に住んでるから、その感覚はよく分からないけど……。


あんたって案外面倒臭い思考の持ち主よね」


目を見てずばっとそう美琴に言われてしまっては、反論の余地がなかった。


「……メールの文章あんなに深く考え込む人に言われたくないです」


せめてもの反論である。美琴も大概面倒だと思うよ!


「ま、いいけど」


そう言って肩をすくめた美琴とは中学で初めて同じ学校になったので、実はあまりこういう話をしたことがなかったりする。


「っていうか、今気がついたんだけど、睦月高校で学年トップの成績の人にマンツーマンで家庭教師してもらってるその家庭教師代金をもし換算するとしたら、そっちの方が塾代より高いんじゃないの?」


た、確かにそうかもしれない。


「けどお兄ちゃんが言い出したんだもん!それにお兄ちゃん天才肌だから勉強教えるの上手じゃなさそうって思ってたけど、とても上手いし……」


だから塾に通うより確実にお兄ちゃんに教えてもらう方が頭が良くなると思う。


「へーそうなんだ。ならあたしも習いたいわー」


どうぞどうぞ。漏れなくあの視線もついてきますよ。


顔の表情で分からない問題をいち早く察しようとするあの情熱は何処から来るのだろうか。


「もしかしてお兄ちゃん将来教師か塾の先生になりたいのかな……」


そう思わず呟いたら、何故か美琴がため息をついた。

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