表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/142

正論なんて聞いてない!1/2

「やった!」


9月中旬、模試の結果を見て私は思わず小さくガッツポーズをした。


夏休みの終わりに学校であった模試だったので、夏の間に頑張った結果が反映されている。


解けたときの手応えや自己採点から自信はあったけれど不安もあったので、いい結果が出て少しだけ安心した。


兄の夏期講習が終わった後に、分からないところがあったらすぐに教えられるようにと同じテーブルで勉強した甲斐があった。


唯花が問題を解いてる間、僕は宿題してるね!って言ってたのに、視線を感じてふと顔を見上げたら必ず目が合って、何処が分からないの?って優しく聞くお兄ちゃんに宿題は!?と突っ込みを入れることすら出来ない状況に耐えただけのことはあった。


しかしお兄ちゃんが勉強していた気配は全然なかったのにいつの間にか宿題終わっていたのには納得がいかない。


「結果、良かったみたいね」


そう言う美琴の顔も笑顔だったので、美琴も成績は良かったのだろう。


「いやー、本当に良かったよー。塾に行きたいってお母さんに言いづらかったから、塾に行かないで成績上がって」


「なんで?」


それは多分、小学生の頃、全然塾に通いたくなんかないってお母さんに言ったからだ。


本当は、みんなと同じように一緒に塾に行ってみたかったけれど、一人で私を育てるために一生懸命働いているお母さんに、いろいろ無理をして欲しくなかったから。


そう吐いた言葉を嘘にしたくなくて、なんとなく塾に通うのは気が引けていたのである。


まぁ、志望校変えるなら背に腹は代えられないかな、とは思っていたけど。


……きっとお母さんは覚えていないと思うし。


「お金がもったいないかなーって思って」


「お金が勿体無いって……あんた今社長令嬢でしょ?塾に行きたいっていうくらい甘えても大丈夫なんじゃないの?」


呆れたように言う美琴さんは相変わらず正論が得意だった。


「それが全然お金持ちになったっていう感じしないんだよね。実感としては夕飯に牛肉が出る回数が増えたくらい」


基本的に外食したり、宅配取ったりしないし。


あ、でもたまにお義父さんとお母さんと一緒に食事をする時のレストランだけはお金持ちになった気がする。


あとお小遣いの額も。いつもそばにいれなくてごめんねってことなのか、お小遣いの額が未だに信じられない額くれるのでむしろ信じてない。


あれはいつかなくなるかもしれないお金、ということで最初の頃に浮かれてずっと欲しかったものを買ってからは貯金する一方だった。


だから、確かにお金持ちの家の子になったはずなんだけど、基本的に自分は変わっていないように感じる。


「あれだけ広い家に住んでも?」


あぁ。うん。あの家は確かにお金持ちって感じがするけどね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ