新キャラなんて聞いてない!2/3 (side湊)
「ところで、三大イケメンって何?」
奴の長文のせいで忘れかけていたけど、ここが一番気になる。
「えー!湊くん知らないの?まぁ、湊くんはなんていうか、俗世に興味ありませんって感じだもんね!俺と真咲くんと湊くんで睦月高校三大イケメンなんだよー!普段ならまとめられるなんて真っ平御免だけど、真咲くんと湊くんと一緒にされるならそれもオッケーって感じ。ところで何の話してたの?女子の話?女子の話なら任せて!」
朝からテンション高いなー。
「てか、二人が女子と付き合ってる話を入学以来聞いたことがないんだけど、そこら辺どうなってるの?」
なんでそんな真剣な顔をして聞くんだろう。
「あー。俺は剣道馬鹿過ぎて付き合っても振られるし、面倒くさくなった」
それで真咲に彼女いないのか。知らなかった。
よく考えたら俺、真咲のこと剣道馬鹿と情報通であるってこと以外あんまり知らないかもしれない。
真咲は情報通なだけあって友達も多いし、案外謎の多い男だ。
「俺は他人に興味がなくて」
というか、他人のために時間を費やしたりするのが無駄だって基本的に今でも思っている。
唯花のためなら別だけど。
「あぁ。真咲くんは硬派って感じだし、湊くんもそんな感じするよね!じゃあ、二人が付き合ってるからっていう噂は嘘なんだよね?」
そんな噂流れてたのか。噂には疎い方だから知らなかった。
「へー。そんな噂流れてたんだ。俺もまだまだ情報通を名乗れないな」
「流石に本人には言いづらいからじゃない?」
そう言いつつ思いっきり本人に言っているこの人は何なのだろう。
「でもその噂便利だな。ほら、やっぱり剣道一筋だからって告白断られるよりも、俺、湊と付き合ってるから……って断られた方が良くない?」
告白は、好きな人がいると言って断るのが、告白してくれた相手が一番納得する。そして、その好きな人が架空の存在ではない、と証明するためには、俺は真咲という存在と付き合っていることにするのが一番信憑性があるとは思った。
「確かに今までの俺なら同意していたとは思うけど、今の俺には唯花がいるからそれはできない」
思ったけれど、俺の一番はもう既に唯花のものなので、誰かと噂が立つわけにはいかない。
「えー!なになに!?唯花って何?ペットの名前?」
あぁ。もういいや。こいつと話すの、真咲に任せよう。
そう目で合図をすると、心得た、と言わんばかりに軽く頷いた。流石真咲。
「なんでペットの名前なんだよ」
「他人に興味がないって言ってたから」
はぁ、成る程。
「唯花ちゃんはこいつの妹の名前!」
「へー。妹さん、いるんだ。歳離れてるの?」
「一つ違いだよ」
「一つ違いかぁ。好きなの?」
「溺愛」
この質問には答えようと思って口を開こうとしたけれど、間髪容れず真咲が返答していた。
溺愛かー。溺愛という言葉じゃたりないくらい唯花が好きだなー。
「そっかー。悲しい恋をしていたんだね……」
「いや、妹って言っても義理だから。義理の妹だから」
「へー。弟さん結婚したの?」
「こいつに弟はいないよ!というか兄と仮定されているこいつでさえ結婚できる歳じゃないのに弟が結婚できるわけないだろ!!」
「冗談だよ。そっかー。義理の妹かー。萌えるね!」
飄々とした顔と声色で質問してくる千葉に突っ込み疲れたのか、真咲が解答権を返す、と目で合図してきた。
お、お疲れ。真咲。