表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/142

お寿司なんて聞いてない!4/4 (side湊)

「お兄ちゃんがどのケーキが好きか分からなくていろいろ買ってみたんだけど、お兄ちゃんはどのケーキが食べたい??」


そう決意して、作ったロイヤルミルクティをリビングのテーブルに持っていくと、椅子に座ってケーキを前に目を輝かせながら、唯花はそう言った。


「唯花が選んだ残りでいいよ」


「本当!?あ、でもどれも好きなケーキだから凄く迷うし、先にお兄ちゃんに決めてもらった方が良いかも……」


うんうん悩む唯花も超可愛い。


「じゃあ、全部半分に切って食べる?」


「……!!そうする!!」


ケーキにナイフを入れるその姿は真剣すぎて、本当は好きなだけ食べていいよって言いたかったけれど、真剣にケーキを切り分けている唯花の姿が可愛くて、言えなかった。


「そういえば唯花はどこの高校を受験するの?」


ずっといつこの話題を振ろうかと機会を伺っていたけれど、今がその時だろう。


「最初は弥生高校にしようと思ってたんだけど……今は睦月高校にしようかなって思ってる。私の成績だと難しいかもしれないけど……」


どんな心境の変化があったのか凄く気になるけれど、特に説得の必要なく睦月高校に来てくれるというのなら、文句など何一つなかった。


「大丈夫だよ。家事も全部僕がするし、勉強も全部僕が教えるから」


「え、いや、でも、お兄ちゃんも忙しいと思うし、美琴の通っている塾に通おうかと思ってるんだけど……」


「大丈夫。しばらく剣道部の活動は少なめなんだ」


そう言っても唯花は何と返事をしようか迷っているようだった。


「唯花は、僕が剣道のインターハイで優勝出来るように、全力でサポートしてくれた。だから今度は僕が唯花を全力でサポートしたいんだ。だから、お願い」


よく考えたら、他人にこれほど懇願してお願いなどと言ったのは、初めてだった。


今までこんなシーンをテレビで見てきて、こいつにはプライドなんてないのか?と思っていたけれど、本当に手に入れたいものがある時には、プライドなどあってないようなものだということを、今日初めて理解できた。


「……分かった。塾に行くのもお金もったいないなって思っていたから、お兄ちゃんに教えてもらえるなら助かるかも、しれない」


お金のことなんて、気にしなくて良いのにって言いたいけれど、自分にとって都合の良い話なので、ここは無視することにする。


「じゃあ、ケーキ食べようか。あぁ。紅茶冷めちゃったから、温め直してくるね」


温めなおしている間に、唯花も気持ちの整理ができたらしく、さっきの苦悩に満ちた表情から、いつもの笑顔に戻っていたので俺は安心した。


「「いただきます」」


そう言って食べたケーキは唯花が勧めるだけあって普通に美味しかったのだけれど。


「あー。ケーキ美味しい。幸せ……」


唯花がそんな台詞を言ったので、嫌いになった。


そんなにケーキ好きなんだ……。お菓子を食べている姿は割とよく見るんだけど、ケーキを食べている姿を見たことなかったから、知らなかった。


今度学校の帰りに美味しいケーキ屋さんを探して買って帰ろうかとも思ったけれど、唯花が俺の作ったもの以外を褒めるのはいやなので、今度の休みににケーキを焼くことにしよう。



これより美味しいケーキの作り方を研究しなければならない。


というか、将来パティシエになるのもいいかもしれないなぁとケーキを美味しそうに食べる唯花を見ながら思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ