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お寿司なんて聞いてない!3/4 (side湊)

「食後にはデザートもあるんだよ!」


お寿司を食べ終わって、なんとなく少し足りないな、と思っていたら、唯花が白い四角い箱を差し出しながらそう言った。


結構大きい箱だけど、なんだろう。


「なんと、bloom Camelliaっていう今超話題のケーキ屋さんのケーキに、朝から並んで買ってきたのです!!」


ドヤ顔で言う唯花、超可愛い。


もしかして俺の優勝祝いのためにわざわざ買ってきてくれたのだろうか。



「前にテレビで見てね!凄く食べたかったから夏休みしか買えないよね!って思って買ってきたの!」


これは深く考えると悲しくなる問題だから今考えるのはやめよう。


「えーっと、じゃあ、そのお礼に僕が紅茶でも入れるね」


唯花は、コーヒーよりも紅茶が好きで、特にロイヤルミルクティが一番好きだ。


「いや、でも今日はお兄ちゃんのインターハイ優勝だし、私が準備するよ」


だから、今回のお礼にどうしても唯花好みの砂糖を入れない、ミルクたっぷりのロイヤルミルクティを作りたかった。


例え、俺が最も望んだお祝いのされ方じゃなかったとしても、唯花のしてくれたお祝いは充分嬉しかったから。


「じゃあ唯花はケーキの用意をしてくれる?」


唯花は不服そうだったけれど、手分けした方が早いと思ったのだろう。


「……分かった」


そう返事をすると、パタパタとスリッパを鳴らしながら、お皿とフォークをキッチンに取りに向かった。



完璧なロイヤルミルクティを作り、出たごみをごみ箱に捨てようと蓋つきのごみ箱の蓋を開けると、冷凍食品の袋や、菓子パンの袋やお菓子の袋ばかりで、料理を作った時に出るごみ……例えばお肉のパックや野菜の袋などは、一つも見当たらなかった。


……もしかして、俺のいない間ずっと冷凍食品や菓子パンだったのだろうか。


そう思いながらゴミ箱から目線を逸らした先にあったキッチンの隅には、埃が溜まっていた。


本当は、唯花は家事がそんなに好きじゃないのかもしれない。俺が完璧な家事をするから無理して完璧な家事をしていたのだろうけど。


俺は唯花に関することはなんでも完璧にしたいけれど、同じことを唯花に求めているわけではないし、それになにより無理はして欲しくなかった。


春から今まで、剣道部の所為と、唯花が俺のために何かをしてくれる、ということが嬉しくて、つい唯花の家事の負担は重くなりがちだったけれど、これからはこういうことがないようにしよう。


とりあえずこの先しばらくは部活は緩めで良いと部長と先生の許可を取ったので、全力で唯花の受験のサポートをするために全ての家事を引き受けるつもりではあったけれど、唯花があまり家事が好きでないのだとしたら、その先も、できる限り俺が家事をしたいと思う。


唯花はきっと責任感が強いから自分も家事をすると言うと思うけれど、俺は唯花に綺麗な空間で過ごしてもらうためなら全然掃除も苦じゃないし、どんなに手の掛かる料理でも、唯花のためだと思うと喜んで作れるから。


唯花の為に使う時間はプライスレスだから!!


などとは唯花に面と向かって言えないので、何か良い言い訳がないか、真咲に相談しなければならない。

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