表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/142

友人に兄妹の距離感について聞きました。

春休みに母が再婚したことによって、私の生活環境はガラリと大きく変化した。


まず、両親が離婚してからずっと暮らしてきたアパートから、一軒家に引越しをした。その家はなんと今回のために新しく建てた家だそうだ。家なんてそう簡単に建たないので、一体いつからこの再婚は計画されていたものなのだろう、と思いながらショールームから飛び出してきたような部屋を眺める。


そんなことができる義理の父は、どこかの会社の社長らしく、仕事がとても忙しいようだった。


そんな父と少しでも一緒にいるために……いや、父の支えとなるために母は看護師を辞めて父の秘書となった。


そうなると必然的に兄と家に二人きりになることが多くなるわけで。


それは、まぁいい。


そこは理解して母さんを応援したわけだし、広い家なので極力部屋に引きこもっていたら、全然問題ないのだから。


しかし、食事はできる限り家族で一緒に食べることになっているのが、兄と二人きりで食事をするのが、それが唯一気まずかった。



「それであんたは家を抜け出してきた、と」


チョコレートをガジガジ噛みながら、私の友人、美琴(みこと)は言った。


「まぁね」


今日は勉強会という名目で、美琴の家に遊びに来ていた。最初の頃は家にいるべきかと思い家にいたのだが、いい加減気まずくなったし、春休みはもうすぐ終わるし、休み明けのテストが近いということもあり、頭の良い美琴に春休みの宿題で分からなかったところを聞こうと思ったからである。


「そのお兄ちゃんの何が問題なのよ。そんなイケメンと兄妹になったなら普通嬉しいでしょ?優しいんでしょ?甘えたらいいじゃない。ていうか頭いいなら教えてもらえばいいじゃない!」


まさにその通りである。楽に宿題の答えを聞こうとしたが故に、美琴のぐうの音も出ないほどの正論を聞く羽目になってしまった。


「いや、まぁそうなんだけどさー。でもやっぱり心の距離感があるというか、優しいけど壁があるというか」


何というか。


「壁があるのは貴方でしょう」


いやいや、お兄ちゃんにも壁がありますって。


「そうだ!美琴と美琴のお兄ちゃんの話をしてよ。普通の兄妹の関係性が分からないと甘えられない」


我ながら良い質問だと思った。話を逸らす、という目的もあったが、実際の兄妹の距離とはどういうものなのか、というのが凄く気になっていたから。


「マニュアル人間か」


そう言いつつ、美琴はため息を吐いて、紅茶を飲んだ。


「うちは、まぁ、あれだよ。いるかいないかわかんない、的な?顔を合わせても話さない日も普通にあるし、必要連絡事項がなければ話さないかな。……というかよく考えたら必要連絡事項も基本的にないから話さなかったわ」


想像以上に美琴兄妹の関係性が冷たい件について。


「えーじゃあうちも今のままでいいじゃん」


普通の兄妹がそうなら、うちもそのままで問題ないだろう。むしろ暖かい方とさえ言える。


「良くないわよ!うちは言わば倦怠期的な感じだからそれでいいけど、そっちは言わば新婚のようなものでしょ?」


いや、両親はそうですけどね、兄妹は関係ないでしょう。


「兄妹に新婚も何もないよ。というか、向こうは今年高校一年生だし、あと二年もすれば家出て行くかもしれないことに今気がついた。そうなればもう本当に他人のようなものだし、このままで問題ないかと」


「だったら、今しかないじゃない。仲良くなるの」


へ?


「それにね、大学生になって出て行くとは限らないわよ。……ご両親が離婚されない限りあんたたちは一生家族なんだし。だったら今のうちに仲良くしておかないと」


確かに彼女の言うことはもっともだと思った。


けれども。


「ぜ、善処します」


改善する気は無かった。


私たちは家族になったけれど、この距離感がきっと丁度いいのだ。


「する気ないだろー。その返事は。別にいいけど」


将来困るのはあんたなんだからね、と美琴は言った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ