優勝するなんて聞いてない!1/3
「ふんふんふーん」
と思わず鼻歌を歌ってしまうくらい兄がいない生活は充実していた。
食べ物も好きな時に適当に食べて、お風呂も好きな時に適当に入って、寝たい時に寝て。
その他の時間はクーラーの効いた涼しい部屋で大型テレビを使ってアニメを見たり、ゲームをしたりする生活は、もう快適すぎた。
わかってる。私は受験生であることくらい、わかってる。
けれど、兄のいないしばらくの間くらい遊んだっていいじゃないか……!
兄がいればこんな生活出来ないわけだし。受験する高校だってランクを下げていることもあって、特に切羽詰まっているわけじゃないし。
というわけで遊んでいたのだけれど、それも今夜で終わり。
なぜなら明日にはインターハイが終わって帰ってくるからだ。
昨日の団体戦では惜しくも二回戦敗退だったらしいけど、全国大会に行ってるだけでも凄いと思う。
しかもお兄ちゃんは個人戦にも出るらしい。まだ始めたばっかりというのに。
つくづく規格外の人だ……。
そう思っていたら、夕方ごろにお兄ちゃんからメールが届いた。
「なになに。インターハイ優勝しました。本当は今すぐにでも飛んで帰りたいのだけど、色々な用事があって帰るのは明日の夕方ごろになりそうです。寂しいです。ではまた明日……ってインターハイ優勝!?!?」
送付されている写真には紛れもなくトロフィーを持って笑顔のお兄ちゃんが写っていて。
疑っていたわけじゃないのだけれど、本当に優勝したんだなぁ……あの人。
あ、明日の夕飯、どうしよう。
普通の適当な夕飯でいいかなーって思っていたけれど、優勝したとなれば普通の適当なご飯というわけにはいかないだろう。
豪華な夕飯?
豪華な夕飯ってなんだ!?赤飯?赤飯でも炊けばいいのか!?
いや、赤飯なんて炊いたことないよ!やばいよ。どうしよう。
……うん。そうだ。こういうときは頼れる美琴に聞くことにしよう。