こんなに一緒に過ごせないなんて聞いてない!1/2(side 湊)
インターハイの優勝トロフィーを貰った時に、俺はなにかが間違っているような気がした。
「ったく、湊、お前すごいな!!!まさか一年目で個人戦で優勝するとは思ってもみなかったよ。団体戦は惜しかったよなぁ。くそっ。俺が、勝ててれば、館川先輩の相手はどう考えても格上だったから、俺が勝たなきゃいけなかったのに」
真咲はそう言って本気で落ち込んでいて、その姿に、俺も少しだけ悔しかった。
「また来年頑張れば良いよ」
ところで何が俺は間違っていると思ったのだろう。
あぁ。そうだ。ここ数か月の唯花との記憶があんまりないことだ!!!!
「真咲!俺ここしばらく部活ばっかりしてた気がする!!!!」
「え、ああ。うん。練習頑張ってたよな、お前」
いや、確かに自主練もすごくしたし、練習にもサボらずに出たし、本当に俺、頑張った。
「って違う!褒めて欲しいわけじゃなくて、俺、ここ最近唯花とのエピソードがないんだよね……その証拠にいきなりインターハイ優勝してるし……剣道始めた時が5月だとしたら今は8月……」
「メタい!その発言はメタい!てか、お前が剣道の練習自主的にしてたんだろうが」
「だって、練習遅くなるね!ってメールしたら頑張ってくださいって返信してくれるのが嬉しかったし、それにご飯だって美味しいの作ってくれるし、リビングの机で突っ伏したら上着を肩に掛けてくれるんだよ!?マジ天使」
「最後の一つは絶対わざとだろ」
そう。それだけは幸せな時間だった……。幸せだったけれども、当初の目的から大幅にずれているような気がする。というかずれている。俺の本当の望みは、唯花と一緒に過ごすことなんだ。なのに。なのに。
どうしてこうなった。
「とにかく、唯花を守れるくらいにはなったし、剣道、もういいかなって」
当初の目的は果たしたわけだし、別に辞めても問題ないはずだ。
「えぇ!?いや、だってさっき来年頑張ろうって言ってくれたじゃん」
「じゃあ訂正する。頑張れ。家で超応援してる」
テレビ画面越しに応援するくらいは応援してるよ。
「おぉい。えっと、ちょっと待ってくれよ。な、落ち着いてくれ。まずさ、あれだよ。そう。インターハイで一回優勝しただけだとさ、やっぱりインターハイ三連覇には負けるじゃん?」
負けるじゃん?って言われても。
「戦っても負けないくらい強くなった自信はあるよ」
「違うって。唯花ちゃんが連れてきた彼氏がもし剣道のインターハイで三連覇したんです。って言ったら、肩書で負けるだろう?そうならないためにも、お前は剣道部続けるべきだと思うぜ俺は」
唯花の彼氏……?唯花の彼氏とか絶対に認めたくない。けれど、確かにそれを口実に彼氏を認めないと言い張ることができるかもしれない。
俺より弱い奴に、唯花は渡せない。
「……分かった。辞めないけど、しばらく休んでもいいかな。俺、やらないといけないことを思いだしたんだよね」




