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131.こんな文化祭になるなんて聞いてない!7 (side湊)

「つまり、連れ去られはしたけれど、誘拐じゃない、と?」


まぁ、俺が言いたいのはそういうことかな。


「そう。今回の誘拐が唯花の実父である吉岡弘道1人の犯行なのか、それとも組織ぐるみなのかによって対応を変えようと思ってて」


「と、言いますと」


ここからが瀬川さんを説得できるかの正念場だ。


「もしも吉岡弘道1人の犯行だったら、今回の件はなかったことにする。恐らく闇金からの借金返済に困った末の犯行だろうから、お金は俺が出すから瀬川さんにはその後の生活の再建を手伝ってほしい。もしも、その闇金も絡んだ組織的な誘拐だったら、うちの特殊部隊も巻き込んできちんと対応する」


素人一人の計画だったら素人二人なら勝てるかもしれないけれど、組織的な誘拐だったら、さすがに俺と瀬川さんだけでは対応するの危ないので。


「・・・・・・ちなみにその判断ってどうやってするんですか」


「今から俺が現場の様子を見てから決める」


そう言ったら、電話越しに瀬川さんに盛大にため息を吐かれた。


「そんな無茶で杜撰な計画、坊ちゃんらしくないですよ。例えもし犯人が身内な人物だったとしても、特殊部隊の人たちに唯花ちゃんの身柄安全に確保してから、犯人の処遇をどうするか考えるものでしょう。いつもの坊ちゃんだったらそうするでしょうし、私や社長でもそうしますよ」


本当に本当にその通りだと思う。


それが正論で、唯花の身体の安全を考えるのなら、最も正しい答えだと思う。


「まぁね。いつもだったらそうするけど、いつもそうするからって今回もそうしなきゃいけないわけじゃないでしょう。今回の件、極力父さんには聞かせたくないんだ。特殊部隊利用したら流石に父さんに報告しないわけにはいかないでしょ」


でも、それだと唯花の心は守れない。


「それはそうですし、たとえ3Sを利用しなかったとしても、私は坊ちゃん方二人に何かあったら社長に報告する義務があるんですけど」


瀬川さんは緩くて不真面目そうに見えるけど、父さんが認めるくらいちゃんとした人だってことはもちろん知っている。けれども、決して話の通じない人じゃないはずだ。


「でもさ、今回の件が、ただの話し合いで済めば特に報告することはないんじゃないかなって思うんです。瀬川さん。お願いします。もしも今回の件が父さんにバレたら絶対に父さんは唯花のお父さんを苦しめた挙句、この世の中から消すんでしょ」


父さんの直属の部下の中には、そういった黒いことをする部下もいることは知っている。直接手は下さなくても、生きているよりも死んだ方がましという状況を作りだすことくらい造作もないはずだ。


「俺も唯花を苦しめたり傷つけたことは許せないけれど、それでもいなくなったら唯花が悲しむってこと、分かるから。だから助けたいんだ。瀬川さんが力を貸してくれたら、今度は間違えずに済むような道を歩けるかもしれないから」


甘いと言われようとも、唯花が助けたいと願っていた相手を見捨てるようなことは絶対にしたくなかった。


「はー。かなり甘くはありますが、あなたも少しは成長してるみたいですね。ただ父親ならこうするだろうと父親の考えを模倣していた頃とは違って、きちんとあなた自身で考えることができるように、なったんですね」


確かに、今までだったら、父さんだったらと考えることが多かった。


迷った時には父さんがするであろう判断の方を選んでいれば、間違いはなかった。


けれど、今回初めて父親が下さないはずの判断をした。


だから、これは間違いなのかもしれない。


でも、正解であってほしいと思う。


「分かりました。もしも今回の件が、吉岡弘道のみの犯行でしたら、私も責任を持って、貴方の意見を採用します。でも、もし組織絡みの犯罪でしたら、特殊部隊に丸投げしますからね」


やっと瀬川さんから言質を取ることができて、一先ず安心した。


正直瀬川さんからこの許可を得るのが今回で一番難しいと思っていたから。


「瀬川さん、ありがとう。無事に唯花を救出できて、文化祭が終わったら瀬川さんのツーリングに付き合うから」


「それなら、頑張らないといけませんね。あ、そういえば少し古い情報になるんですけど、今手元にある分の吉岡弘道の情報を送っておきますね」


流石瀬川さん。指示を送らなくてもこちらが望むことが分かっている。

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