128.こんな文化祭になるなんて聞いてない! 3(side 湊)
今年で完結します
文化祭に向けてしなければならないことが山積みであった。
文化祭の統括だけでなく、生徒会選挙に向けた準備や引継ぎ資料作成もしないといけない上に、剣道部とクラスの出展内容にも気を配らないならず、仕事が多すぎる状態であった。
その上、どれも待つのが仕事みたいな内容も多くて、なかなか仕事が進まない。
そのため最近は唯花とゆっくりする暇さえない。何か考え込んでる様子ではあるけれど、文化祭で描く絵について悩んでいるのと言われてしまうと、相談に乗ることさえも難しかった。
「はやく文化祭終わってほしい・・・・・・」
思わず愚痴が零れ出た。あと一ヶ月近く同じような生活が続くのかと思うとげんなりする。唯花の入学式で在校生代表の挨拶を言いたいがために生徒会長になったことに後悔はないものの、さっさと生徒会長など辞めたかった。今回の選挙にまた出てほしいという声は方々から聞こえてはいるが、到底出馬する気などなかった。
「俺も早く文化祭終わってほしい!!心置きなく剣道したい!!ってか思ったけど、書記がいないからこんなに忙しいんじゃないか??元々生徒会が4人って言うのも少なかったのに、さらに1人いない状況なんてそりゃ忙しいに決まってるよな・・・・・・」
そうか。書記を選んでいればもう少し仕事量が少なかったのか。でも、新しい書記を選ぶのに、それはそれで手続きや選挙などの面倒なことを沢山しなければならなかったため、残りの任期期間を考慮して選ばなくていいかってことになったのだった。
「俺も珍しく真面目に働いてるんで、その話題は勘弁してください」
俺は真咲の言葉を事実として受け取ったけど、桐葉は責められていると感じたらしい。
苦笑を浮かべながら桐葉は言うけれど、書記がいなくなったのは桐葉だけじゃなく、俺も悪かった部分もあるわけで。そんなに責任を感じなくてもいいのに、とは思う。
「いや、別に誰かのこと責めたかったわけじゃなくて、なんでこんな忙しいのかその理由が分かってしまったというか・・・・・・。誰か、電話鳴ってる」
「俺でもないよ、湊じゃない?」
基本的に生徒会関連の電話や問い合わせは真咲か桐葉の携帯に連絡が行くから、自分の携帯が鳴っていることに直ぐには気が付かなかった。
「美琴ちゃんからだ」
美琴ちゃんからなんて、珍しいとは思ったけれど。
「もしもし――」
だからこそ嫌な予感がした。
「唯花が、唯花がいないの!!!」
そう涙交じりに言う美琴ちゃんの声から、ただ事ではないことを察した。
「美琴ちゃん、落ち着いて。今どこにいるの?学校?」
画材を買いに行って迷子になった、とか。その理由が最も平和的でありがたいけれど、迷子だとしたら美琴ちゃんもこんなに焦って連絡してこないだろう。
それとも、また、唯花のいじめが始まって、誰かに呼び出されたのだろうか。
「今は、国道沿いの、カフェ」
カフェでいなくなるって、どんな状況が考えられるだろうか。いや、今は推測していても仕方がない。美琴ちゃんから答えを聞くのが優先だ。
「一から話してもらえないかな」
少しだけ落ち着いた様子の美琴ちゃんから聞いた話は、予想外の内容だった。




