123.こんなデートになるなんて聞いてない!(side湊)1/2
唯花から誘われたデートは、昼食までは大成功だったと思われる。
これも真咲と桐葉の「作品を鑑賞している唯花ちゃんだけを見るなよ!!気を使うからな!!作品もそれなりに感想を言えるくらいは眺めろよ!」というアドバイスを忠実に実行した結果である。
けれど、昼食時に唯花と進路の話をしたのは失敗だった。
てっきり美大進学するものだと思い込んでいたため、軽い気持ちで進路の話をしてしまったのである。
「まさか唯花の夢が公務員だったとは」
月曜日の放課後。
本来ならば生徒会メンバーで集まって文化祭について話す予定だったが、今は一か月後の文化祭について話し合っている場合ではない。
「ほほう。堅実的な将来じゃん。唯花ちゃんらしい」
俺の衝撃とは裏腹に、真咲は読んでいた書類から顔を上げることなくさらりと言う。
「はぁぁ。俺も今から公務員目指そうかなぁ」
唯花が入院した時には、真剣に医者も職業候補の一つではあった。しかし、父さんの持つ圧倒的な権力を見せられたことで、唯花を守るためにはやっぱり父親の跡を継ぐのが一番であると腹を決めたところだったのだが。
「いーじゃん公務員。良い大学へ行って官僚になって議員になって総理大臣とかにもなって世の中を良くしてくれよ。俺は超期待してる」
桐葉はペンをクルクル回しながらそう言うけれども。
「期待されても困る」
別に俺は公務員になりたいわけじゃないのだ。唯花の傍にいるために同じ職業に就きたいと言っているだけで。
「だよねー。いやーでも、意外だったなぁ。唯花ちゃん、てっきり画家になるんだと思ってた。てか、俺が唯花ちゃんの立場だったら絶対画家になるけどねー」
というか、俺もそう思っていた。美術の先生にさりげなく唯花の絵の話を聞いた時は『まだまだ未熟な面は多いですが、磨けば光ると思いますよ』と言われていたし、絵は詳しくないけれど、唯花の絵に全く才能がないわけじゃないと思っていたからだ。
唯花だって、絵を描く時はすごく真剣で、入院している間も絵を描くくらい絵を描くことが好きなのに。
「俺は唯花ちゃんの気持ち、何となく分かるけどね。俺は剣道を愛しているけれど、プロの剣道家になる気がないのと一緒」
俺と同じで夢がなかった真咲は、いつからか警察官になるのが夢だと言っていた。
だから、剣道を始めたのだと思っていたのだが、本当は順序が逆だったのかもしれない。
剣道に出会って、自分が長く剣道と関わっていくためには、警察官になるのが一番だと。
「いーじゃん、プロ剣道家。剣道YouTuberでもしてみれば意外と食べていけるかもよ」
そう言う桐葉もこの間YouTuberになりたいと言っていたような気がする。
「俺が湊だったら、そうしたかもしれないけどな」
初めてその時顔を上げた真咲と目があった。
現代恋愛日間ランキング載ってて嬉しかったので更新しました。
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